∞ 温泉発電「地域振興に」 1988年7月20日午前。地下1800メートルまで達した井戸から、蒸気が勢いよく噴き出した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が大蔵村肘折で行った「高温岩体発電システム」の実験だ。地中深くにある250度以上の岩盤付近に水を注入して熱水や蒸気を作りだし、発電に使う。天然の熱水や蒸気がなくても発電ができるとして期待された新技術だ。 実験は高温岩体の存在が知られていた肘折で85年に始まり、一定の成果を上げたものの2002年に終了。以来、日本で高温岩体発電の開発は行われていない。現在は米国やオーストラリアなどで商用化を目指した研究が進められている。肘折の実験は未来を先取りしすぎていたのかもしれない。 実験に参加した独立行政法人産業技術総合研究所・地圏資源環境研究部門(茨城県つくば市)の及川寧己主任研究員(48)は「地熱を取り巻く最近の状況を見れば、高温