日本では自動車に乗るさい、シートベルトの着用を義務づけられている。近年では後部座席に座るさいにも義務づけられるようになった。 考え方によっては、これは非常にお節介な話である。シートベルトをするかしないかというのは基本的に個人の選択の問題であって、もし事故にあって自分の体が車から飛び出すようなことになっても、それは本人が死ぬだけの話だ。だから、国があーだこーだ口を出すような問題ではない。これは「自己責任」の問題なのだから。 ケント・グリーンフィールドは著書『<選択>の神話』のなかで、このような自己責任の考え方とともに、もう一つの考え方を紹介している。 シートベルトの例を再び用いると、それをしないことによって害を被るのは決して本人だけではない。車を飛び出した自分の体が誰か別の人にぶつかるかもしれない。あるいは車から体が飛び出す瞬間を目撃させることでたまたま周辺にいた人にトラウマを与えてしまうか