「緊張すると手が震えるんです」という来談者の訴えに、私たちは「そんなことは、練習を繰り返せば何とかなるでしょう。がんばって経験を積めば、度胸がついて震えるなんていうことはなくなりますよ。」などと言いそうになりはしないか?常識的に考えればそうである。慣れないから緊張し、手が震える → 慣れればそんなことはなくなる、という常識。おそらく軽い震えについてはそれでは何とかなる。しかし深刻な震えはそうではない。イップス病は練習すればするほど悪くなる、というところさえある、と田辺医師(上述)の本にある。イップス病に悩まされる人の数は多くは経験豊かなプロのゴルファーであるというところが不思議なところだ。そしてそれが不思議な脳の配線異常に由来する。臨床家としては脳科学の神秘さと計り知れなさを認識し、その治療を専門家にゆだねるべきだろう。 ここでの教訓は、私がこれまで繰り返してきたことに近い。「頑張れ」とか