90年の生涯で93度の引越し 江戸時代に一世を風靡した絵師、葛飾北斎(1760-1849年)。『冨嶽三十六景』や『北斎漫画』を代表とする浮世絵は、遙か海を超え、ゴッホやゴーギャンら絵画の巨匠にも多大な影響を与えた。その功績は北斎の没後150年以上を経てもなお評価は高く、1998年には米国の『LIFE』誌が企画した「この1000年間に偉大な業績をあげた世界の人物100人」に、日本人で唯一選出されたほど。 葛飾北斎『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』すみだ北斎美術館蔵 ところがこの浮世絵師、「奇行の人」としても有名であったことをご存知だろうか。江戸時代の平均寿命が50歳ともいわれる中、その90年という長い終年にも驚くが、3万点もの作品を残し、弟子・孫弟子の数は200人以上。93度も転居を繰り返し、雅号を変えること約30回。もうこれだけで奇人っぷりが十分伝わるようにも思えるが、数々の逸話から見えてきた