"能力主義の倫理は、勝者のあいだにはおごりを、敗者のあいだには屈辱と怒りを生み出す。こうした道徳的感情は、エリートに対するポピュリストの反乱の核心をなすものだ。ポピュリストの不満は、移民やアウトソーシングへの抗議以上に、能力の専制に関わっている。こうした不満にはもっともな理由があるのだ。 公正な能力主義(社会的地位は努力と才能の反映であるとするもの)の創造を執拗に強調することは、われわれの成功(あるいは不成功)の解釈の仕方に腐食作用を及ぼす。つまり、彼らの成功は彼ら自身の手柄であり、彼らの美徳の尺度だと考えるように──そして、彼らよりも運に恵まれていない人々を見下すように、と。 能力主義的なおごりは勝者の次のような傾向を反映している。すなわち、彼らは自らの成功の空気を深く吸い込みすぎ、成功へと至る途中で助けとなってくれた幸運を忘れてしまうのだ。頂点に立つ人びとは、自分は自分の手にしている境