田口 (省略) 宮台 僕の読者がふたり死んでいます。ひとりは『美しき少年の理由なき自殺』(文庫版タイトル『この世からきれいに消えたい』)の主人公に据えました。僕が知らない新潟県の読者だったから出来ました。もうひとりは東大で91年から5年間ほど非常勤講師をしていた時代の教え子。ある場所に僕の講義を聴いてデートクラブに出入りするほどフットワークが軽い子たちが東大生にもいると書きましたが、そのひとりです。その子からコクられていたこともあって、身近にいた彼女については主題的に書いたことはありません。 ふたりの自殺は5年ほど間があいていますが、その間一貫して僕は「意味から強度へ」という物言いをしていました。新潟の少年が自殺した後「〈社会〉から〈世界〉へ」という具合に言い方を変えました。両方は同じことを指します。意味とはコミュニケーションの中での機能のことです。コミュニケーションとはある人の選択と別の