冒険のかたちはさまざまだ。 誰も行ったところのない場所へ行ってみたい。 誰も見たことのないものを、この目で確かめたい。 鳥のように空を飛んでみたい。 人間が作り出した動力を使わずに、自然の力だけで海を駆けてみたい。 胸に抱く好奇心や探求心は、さまざまな冒険のかたちを作り出してきた。 角幡唯介という男がいる。 「謎」、「幻」、「空白」といった言葉に抗い難い魅力を感じる彼は、あるときは人類未踏の峡谷へ向かい、あるときはミステリーを解きあかすような冒険を敢行する。そのうえで、壮絶かつ過酷な体験を、ノンフィクションとして発表しているのだ。 角幡の肉声を聞いてみよう。 彼が抱く世界観に、我々は驚くはずである。 角幡にとって探検家という職業は、ずっと思い描いてきた人生のコースではなかった。 「最初から興味があったわけではないんです。『なぜ探検家になったんですか?』と聞かれることがあるのですが、小さい頃