照る日曇る日第1768回 2019年7月から今年22年の3月までの598首を精選した、尊敬する歌人の最新歌集である。 「象の眼」というタイトルは、「<象の眼>と妻が言いたり<象の眼>は疲れ切ったる時のわれの眼」という歌に拠るものだが、今年86歳という高齢ながらZoomを駆使して歌会にセミナーに日参。その若者を凌ぐ若さと情熱にうたれる。 氏の師匠は宮柊二であるが、ここでは「日中戦争と宮柊二の戦闘参加」と題された数首を紹介しよう。 団長を二回務めき『山西省』<柊二の旅>に三度参加し 柊二らが戦いし敵は中共の朱徳指揮下の八路軍なりき 伸びきったゴムみたいだね七十万の日本兵中国に釘付けされて 殺・奪・焼の限りを尽くす作戦を剿共作戦と書物は記す 包囲され隊全員が殺されたいくさも数多「山西省」で 1939年以来5年間に亘って、大陸で中国兵と戦った宮柊二は、その戦闘体験を歌集「山西省」で生々しく歌ってい