戦後、日本文化が深刻な危機に直面したことがある。当時、支配していた連合国軍総司令部の民間情報教育局(CIE)が、日本語のローマ字化を企図したのだ。漢字は習得が難しいから日本人の教育程度は低い。このため戦前、軍部の独走を許したのだという。 ▼乱暴至極の理由だったが、日本人にも賛同者がいた。小学校で算数をローマ字で教える「実験」も行われた。しかし文部省の教育研修所が日本語の読み書き能力の調査をしたところ、過半数が90点満点で80点以上だった。心配ご無用となりCIEも断念したのだ。 ▼だが実際に「脱漢字」や「脱ひらがな」が実現していたらと考えるとゾッとする。大多数の日本人が「古事記」も「源氏物語」も「坊っちゃん」も読めなくなっているに違いない。便利な点はあっても、文化や歴史は完全に断絶の目にあっていただろうからだ。 ▼菅直人首相の思いつきによる「脱原発」にも似たようなところがある。ローマ字化と同
広島で66回目の原爆の日を迎えた。 今年は東日本大震災に伴う福島第1原発事故と重なり、核兵器廃絶の訴えと原発政策のあり方の関連が注目されたが、菅直人首相は平和記念式典あいさつで「非核三原則堅持」などをうたう一方で、「原発依存度を引き下げ、『原発に依存しない社会』を目指していきます」と持論の脱原発を繰り返した。 だが同じ6日、東北電力が東京電力に緊急の電力融通を求めたように、原発なしで日本が立ちゆかない現実は既に明らかといえる。脱原発にこだわる首相の言動は無責任としかいいようがない。 東北電力が東電に電力融通を求めたのは4日以来3日連続で、東北を襲った先月末の豪雨とその後の気温上昇のダブルパンチを受けて電力危機に陥ったためだ。にもかかわらず、首相は式典後の会見でも「私の(脱原発)発言と政府の方針は方向性で一致している」と強調した。原発再稼働が進まない中で、脱原発の道を突き進めば危機は全国に広
【北京=矢板明夫】中国の黒龍江省方正県が建てた旧満蒙開拓団の慰霊碑が、国内世論の反発と過激派による破壊行為を受けて撤去されたことは、江沢民時代に実施した反日教育をうけた世代が中国の世論を形成する主流となりつつあることをうかがわせたと同時に、民族感情を法律より優先する中国の一面を露呈している。 1945年夏のソ連軍の参戦によって、黒竜江省各地の旧満蒙開拓団員は難民と化し、逃げる途中に方正県で足止めされ、混乱の中に大勢が死亡した。1963年に周恩来首相(当時)の指示で同県内に日本人公墓が造られた当時は、中国政府も国民も「戦争の責任は軍国主義者にあり、日本人民は中国人と同じく被害者だった」という見方を示し、強い反対はなかった。 しかし、1989年に発足した江沢民政権は、反日教育を徹底的に実施し、「日本人民はみな加害者」という価値観が形成された。慰霊碑建設にネット上で反発する人も、過激行動を取る人
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、東京都が防災対策の一環として進める都道の電線地中化事業に「黄信号」がともっている。 費用の一部を負担する東電が原発事故で巨額の賠償責任を負い、今後の事業参加が白紙になったためだ。都は「都市防災の観点から、電線地中化は待ったなしの状況なのに」と頭を抱えている。 「無電柱化」とも呼ばれる都の地中化事業は1986年度にスタート。歩道を掘ってトンネルを作り、電柱間に張り巡らせていた電線や電話線、ケーブルテレビ用の通信線などを地下に埋めて電柱をなくしていく。 全長約2300キロ・メートルある都道は、環状7号線や山手通りなど震災時の救援活動を担う幹線道路が多い。このため、東日本大震災を受けて都は、緊急対策として地中化事業の促進を改めて盛り込んだ。地中化には、水道管やガス管の移設など、1キロ・メートル当たり6億円程度かかる。今年度は総額約250億円を投じて約70キロ
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