・小さいおうち 古き良き昭和モダンの設定+メタレベルの仕掛けがよく効いている。面白かった。 「わたしが奉公に上がった時代、昭和の初めになれば、東京山の手のサラリーマン家庭では、女中払底の時代になっていたのだから、「タキや」と呼びつけにされるようなことは一切なく、かならず「タキ」さん」と、「さん」づけで呼ばれ、重宝がられていたものだ。東京のいいご家庭なら、だいたいそうであろう。わたしがその仕事についた時代は、「よい女中なくしてよい家庭はない」と、どの奥様だって知っておられたものだ。」 昭和初期、赤い三角屋根の小さなおうちで住み込み女中をしていたタキが、60年後に遠い昔を振り返る回想録がこの作品の大半を占める。とてもお上品な「家政婦は見た」。この家の女中であることに満足し、終の棲家とまで考えていたタキは奉公先で大切にされて、家族同様に暮らす。 だが、美しい奥様、玩具会社常務の旦那様、手のかから