【東】それは別の視点で言えば、人文科学的な言説が今後必要かどうかっていう問題ですね。必要かどうかは難しい問題ですが、サステナブルかどうかといえば、結果は見えているような気がする。人文科学は、これからも凋落の一途をたどるんじゃないかな。私たちの社会は、人文科学的な本質論なしで動くようにデザインされ始めている。というか、それしかないんですよ。 【宮台】その点について、東さんの本を読んで最後に残る困惑がある。つまり動物でいいんじゃないかという思いと、いや動物でいいのかなという思いの狭間に突き落とされるんですね。確かに本質論はいらないというのは、事実的水準でテロリズムを抑止するための智恵です。でも智恵は学問とは違う。単なるテクネーで、ピアノの弾き方と同じ水準です。 【東】でも学問と智恵とどちらが重要なのかは難しい。別の観点を導入しますとね、僕はすべての根幹には「工学的な知」の問題があると思うんです