ブックマーク / kihiminhamame.hatenablog.com (183)

  • 二十一日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (壁に映った人影が意味不明な講釈をする) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 廿一日の夜は、ふと影の如く人の形壁に映り、顔形《かほかたち》鮮やかに見へけるが、見臺《けんだい》を前に置きつゝ、高らかに書物を講じける。 然れども、言葉の訳も詳《つまび》らかならず。 可笑《をか》しく怪しき事也。 【現代語訳】 七月二十一日の夜は、ふと影のように人の姿が壁に映り、顔もはっきりと見えました。 その人影は、見台《けんだい》を前に置きながら、高らかにを読み上げました。 しかし、何と言っているのかさっぱりわかりません。 ヘンテコで不気味な出来事です。 【解説】 今回は変なだけで、特に被害があったわけでもないですから、どうってことないですね。 平太郎の反応すら書かれて

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    aka_koushi
    aka_koushi 2021/11/09
    今日は少し淡白?でしたね。平太郎も出てきませんし。でも、これが何かの予兆のような気がするのですよね~。次が楽しみです!
  • 二十日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (中村平衛門からの使いの美女に化けた妖怪) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 廿日の夕方、中村平右衛門が家よりの使ひとて、美敷《うつくしき》女来りて、菓子を贈りける。 賤しき女なるに、物 嫋《たを》やかに麗《うるは》しき事、いと言ふべからず。 「誠に斯ゝる女も有りける物か」と心も惑ばさるゝばかり也。 然れば、平太郎、ふと心附き、然《さ》有らぬ躰《てい》に持て成しけるが、一ツ二ツ話し、やがて心無げに帰りける。 平太郎も其の跡を見送りしに、門に出て後ハ見失ひしと也。 跡にて調べけるに、隣に菓子を拵《こしら》へしが、重一つ見えざりける。 果たして、その重の内にて有りけるとぞ。 化け物の恐ろしくも巧みし事とて、ます/\慎ミ恐れける。 其の後も少しハ変わり

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    aka_koushi
    aka_koushi 2021/11/07
    この女性が化け物だとは分かりませんよね~。今回はさすがの平太郎も動揺しているようすが伺えますね~。色仕掛けは平太郎にとっても抗いがたいのかもしれません。でも我に返ったのですね~。さすが平太郎!
  • 十九日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (屋根に上げられた罠) ※この挿絵では、木に上げられている。 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十九日には、皆/\寄り合ひて、穢多《ゑた》の十兵衛と言へる者に、申し含め、彼が家に傳へし良き罠《わな》有れば、是を以《も》て、此の夜ハ罠を掛けさせける。 然るに、化け物更に掛ゝりもせで、夜もすがら化け物共、罠を嬲《なぶ》り者にし、剰《あまつさ》へ隠れ居たりける十兵衛が鼻を摘《つま》みける。 元より斯様《かやう》な事には出合ひし十兵衛なるに、何と無く恐ろしくて、隠れ居る事もなり難く、平太郎に暇を乞ひ、帰り、然れども、「良き罠なれバ、もしや変化の掛ゝりもやしつらん」と夜明けて後、見に来たり、平太郎に尋ねしに、化け物は掛ゝりもせで、巧みに仕掛け置きし罠を取り出し

    十九日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/11/06
    この罠はどんなものなのでしょうかね~。「よい」罠とは? 気になります。江戸時代の身分についての記載を実際の書物で見たことがなかったので新鮮でした。平太郎の交流関係も気になります。続きが楽しみです。
  • 十八日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (天井に糸でくくられる畳 と 飛び歩く錫杖) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十八日朝、権八来たりし故、平太郎申す様《やう》ハ、「奥の間に行きて見給へ」と権八を誘《いざな》ひて見るに、居間の畳を悉《こと/\》く糸 以《も》て天井に括《くゝり》上ゲ置きしと也。 両人申し合はセ、「其の畳を下ろさん」とて、梯子《はしご》など設けし処に、其の畳、忽《たちま》ち一度に落ちける。 危うき事にて限り無く、驚きしとぞ。 その後ハ、敷物元の如くに敷き直して、権八ハ興を醒《さ》ましつゝ、帰りぬ。 夜に入りて、納戸の内より大い成る錫杖《しやくぢやう》、自《おの》づから出て、居間の内を彼方此方《あちこち》と飛び歩きけると也。 【現代語訳】 七月十八日の朝、権八が来たので、

    十八日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/11/05
    権八さんの感覚が普通だと思いますw 錫杖を持ったモデルさん。三つ目さん登場ですね~。雰囲気がいいですねw また平太郎の強さを感じました。次のお話も気になります。今日もありがとうございます。
  • 十七日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (賤の女に襲い掛かるタライ) (串刺しになった童子の首) ※この挿絵には串が描かれていない。 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十七日昼頃、平太郎が家に前方より立ち入りし賤《しづ》の女《め》有り。 今日《けふ》訪《と》ひ来たりしに、互ひに物語せし処《ところ》に、何処《いづく》とも無く盥《たらひ》転び出で、彼《か》の女を追う程に、門の外迄出せしに、女ハ平太郎が投げ打ちせしと思ひし由《よし》にて、急ぎ帰りけると也。 此の夜ハ眼《め》丸《まろ》き童《わらべ》なる首、十一弐ばかり串刺しにて、田楽《でんがく》の如く成るが、串を足として飛び〻出でツヽ彼方此方《あちこち》と廻りけると也。 疎《うと》ましき様《さま》なりとぞ。 【現代語訳】 七月十七日の昼ごろ、この

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    aka_koushi
    aka_koushi 2021/11/04
    いきなり不気味な感じになってきましたね~。妖怪さんたちの逆襲でしょうか。平太郎の行動についての記載がないのが、余計に気になります。次を期待してしまいますw
  • 十六日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (額を外すと落ちてきた鞘) ※この挿絵では刀身も描かれている。 (化け物からの差し入れの漬け物桶と、踊り出す香炉や机など) ※右下に漬け物桶。 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十六日昼の頃、居間なる額、「とんとここゝに、とんとこゝに」と鳴り響きける。 餘《あま》りに鳴りける故、やがて額を下ろし見れば、鞘《さや》一ツ煤塵《すすちり》などに打ち混じりて落ちにける。 是ハ前に奴《やつこ》が失ひし鞘にて有りしと也。 夜に至りて、友達訪ね来たり、咄《はな》しける内、臺所の方に何やらん白き物見えて、静《しづ》/\と申す聲、し出しぬ。 集まりし友、誰とても「行きて見ん」と言へる者無く、平太郎行きて見れバ、漬け物桶一ツ、一人で来たりける。 「道筋の戸も明かずして出

    十六日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/11/03
    平太郎の強さをまた感じました。そんな平太郎を妖怪はどう感じているのか、気になってきました。執拗に付きまとうことで平太郎が負けることを目指しているのか? 次の展開が気になります。
  • 十五日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (居間の中が真っ白でベタベタになる) ※左奥の障子の向こうに見えるのが唐臼。 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十五日の夜ハ、居間の内、真白くなり、上下《うへした》とも、糊《のり》など塗りたる様《やう》に粘り附きしとなり。 恐ろしき事無かりける。 只、寐處《ねどこ》の設《まう》けもならで、柱に寄り、やう/\[漸う]に仮り寐して、明ケを待ちにけり。 【現代語訳】 七月十五日の夜は、居間の中が真っ白になり、天井も床も糊を塗ったようにベタベタになりました。 恐ろしくもなんともないのですが、布団も敷けないので、平太郎は、柱に寄りかかってなんとか仮眠をし、夜が明けるのを待ったのでした。 【解説】 今回は地味ですけど、かなり嫌ですね。 平太郎が怪異が起きても無視

    十五日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/11/02
    平太郎はこんな姿をしていたのですね! ありがとうございます。いかにも強そうな感じです。地味でも怖い。この状況でも動じない平太郎。ますます気になる存在です!
  • 十四日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (天井から舌を出して平太郎を舐める老女の顔 と 勝手に動く唐臼) ※左奥の障子の向こうに見えるのが唐臼。 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十四日の夜は、裏なる唐臼《からうす》、我と我が一人、臼 搗《つ》きける。 平太郎是を見て、誠に白げざる米を臼壺に入レ置きしに、明くる日迄も臼搗事止まざりけれど、米は白げもセで有りしとなり。 替わりたる事ども也。 此の夜、更《ふ》けて後なりしが、平太郎が臥したる上の天井一面に老女の顔となりて、やがて長き舌を出し、蚊帳《かや》を貫き、臥したる平太郎を舐《ねぶ》りしが、取り合ひもせで、其の侭《まま》寝《いね》しに、後は次㐧/\に消へ失せしとなり。 勇氣なる事ども也。 【現代語訳】 十四日の夜は、裏にある唐臼が、一人で勝

    十四日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/11/01
    気味悪い老婆です。さすがの平太郎も、と思いきや、さすがの平太郎ですね。彼が何者なのかますます気になってきました。どんな姿をしているのかだけでも知りたい。挿絵はないのですかね。
  • 十三日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (空から真っ赤な石が落ちて来る) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十三日の夜は、心易き同士《どし》集まり、語りける様《やう》は、「西江寺《せいごうじ》の什物《じふもつ》、佛判《ぶつはん》と言へる者有り。諸/\の災難の払いになる由、借り持て居間に掛けばや。如何に」と申し合わせ、取りに遣はしける。 使ひにハ出で行くに、何とやらん、足の縮む様《やう》にて、到る事叶わざりけれバ、平太郎、「自《ミずか》ら参らん」とて、集まりし人〻にハ、「留主《るす》し給はれ」と頼ミて出で行きけるに、其の中に有りし平五郎と言へる者、氣強き男なれバ、「供《とも》セん」とて、同じく出で行きぬ。 然《しか》るに、道なる薮の傍《かたへ》を行きけるに、空より稲の如くに光りて、真赤き石

    十三日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/30
    画だけだとその意味が分かりませんが、文章を読んでなるほど、と思いました。平太郎は勇気があって行動力もある。災難も本人ではなく平五郎に降りかかるのですね~。平太郎がますます気になってきました。
  • 十二日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (葛籠が化けたヒキガエル) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 十二日には化け物の仕業と見へて、居間の四角の柱に貼り置きし祈祷札《きとうふだ》に輪の如く墨を塗りて消しけるとぞ。 扨、夜に到りてハ、物置の中より大いなる蟇蛙《ひきがへる》飛び出て、平太郎が寝《いね》て有りし上に飛び上がりける。 其の蛙の胴を見れば、組紐《くみひも》の結びて有りし故、平太郎も「葛籠《つゞら》の化けし物よ」と心得、そのまゝ此の紐を捕らへて離さず臥せけるが、夜明けて見れバ、臥したる腹の上に葛籠を乗せて、紐を捕らへて有りけるぞと。 【現代語訳】 七月十二日には、居間の四角の柱に貼っておいた祈祷札《きとうふだ》の文字が、輪のように丸く、墨で塗りつぶされて消してありましたが、化け物の仕

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    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/29
    大きなヒキガエルの絵は迫力があります。こんなものが迫ってきたら耐えられないと思います…。平太郎は強いですね、いつもながら。妖怪慣れしているのでしょうか。これからも幾多の妖怪と渡り合っていくのですかね。
  • 十一日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (勝手に動き出す、すり鉢とすりこ木) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 明くる十一日の夜は、一族の者、咄《はなし》に来たりけるが、一人の刀の鞘《さや》を化け物に隠され、皆〻尋ねし處に、更に見へず。 平太郎、やがて其の事を高く云ひて怒りけれバ、鞘、天井より落ちにける。 「実に化け物も平太郎にハ恐るゝなるべし」と申しける。 扨、鞘を得て後ハ、何《いず》れも喜び帰りしに、跡にて臺所の方に擂鉢《すりばち》、擂粉木《すりこぎ》、我と我が出でゝ、擂り廻り/\、間の内を廻りけるとぞ。 是は又、珎《めず》ら敷《しく》、可笑《おか》しき事にこそ。 【現代語訳】 翌、七月十一日は、親戚の人たちが話しにやって来たのですが、一人の刀の鞘《さや》を化け物に隠され、みんなで探し

    十一日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/28
    平太郎にゴマをする、という落ちなのですかね~。イラストとその説明を見たときには、少し怖さを感じたのですが、ヘンテコで面白い事で締めくくられているとは想定外でした。面白いですね~。
  • 十日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (ニセ貞八の頭が割れて赤子が出てくる) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 明くる十日の宵の内も、馴染《なじ》ミの人にて貞八と言へる者に変じ来たり。 臺所にて物語せし内に、其の貞八が頭、二ツに割れ、猿の如き赤子、二ツ三ツ出しに、後は一所になりて、一ツの大入道《おほにうどう》になり、やがて平太郎に掴み付かんとせし故、平太郎も捕らへんとするに、疾《と》く消え失せける。 平太郎ハ恐るゝ心も無かりけるが、動《やや》ともすれバ、馴染ミの人と化け来たり、惑はさるゝには困りぬるとぞ。 【現代語訳】 翌、七月十日の日が暮れて間もない頃も、妖怪は、平太郎と親しい貞八《さだはち》という者に化けてやって来ました。 台所で話をしていると、その貞八の頭が二つに割れ、猿のような赤

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    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/27
    親しい人に化ける。これは妖怪の恐ろしさですね。挿絵だけ見るとよく理解できませんが、文章と合わせてみるとその怖さが伝わってきます。平太郎さんの冷静さも気になりますが。
  • 九日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    何故か、九日目はこれまでに比べて記述が長いので、覚悟して読んでください(笑) (切腹したニセ亮太夫) (ニセ亮太夫の幽霊) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 九日の夜ハ、四つ頃迄も何事無かりしに、ふと誰やらん訪れし故、「誰ぞ」と問へバ、「亮太夫《りやうだゆう》」と答《こと》ふ。 其れより戸明ケて、内に誘ひけり。 扨、亮太夫申す様ハ、「今宵ハ此の家の化け物退治すべしと思ひ、兄影山彦之助、家に持ち傳へし有名の刀取り出し、持参せし」由、語りし内に、何やらん円《まど》かなる物転び入りし故、亮太夫、右の刀にて追ひ詰め/\せしが、終《つひ》に切り附けしと見えて、忽《たちま》ちに火花を散らしぬ。 其れより平太郎ハ灯り持ち行き見れば、石臼《いしうす》也。 然れバ、刃

    九日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/25
    切腹。話が深刻になってきた。絵を見て深刻な事態を認識。でも、平太郎さんは助かったのですね。話の急展開にハラハラしました。この幽霊は何者だったのでしょうか。
  • 八日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (暴れまわる塩俵と足駄) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 翌、八日の夜は、一家の者両人来たり、俳諧の物語などし居けるに、其の折しも、塩俵弐ツ三ツ席中を立ち廻り、はら/\塩を降らしける。 三人は目も離さで見る内に、足駄《あしだ》一足急に[飛び]来たり、襖《ふすま》を突き破り、外に[飛び]出ぬ。※[脱字]を補いました。 両人は氣を失ひし心地せしが、やがて暇《ゐとま》を乞ひ帰りけるとなり。 【現代語訳】 翌、七月八日は、平太郎の一族の者が二人来ました。 俳諧の話などをしているちょうどその時、塩俵が二つ三つ現れ、その場を暴れまわって、パラパラと塩を降らせました。 三人が目も離さずにその様子を見ていると、今度は足駄《あしだ》[高下駄《たかげた》]が一足、急に

    八日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/24
    派手さはありませんが、塩というのが何か意味がありそうで怖いですね。気を失いそうになりながらも帰途に就くことはできるのか~とも思ってしまいました。今日もありがとうございます。次の妖怪も気になります。
  • 七日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (大きな坊主) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 七日の夜は、彼是《かれこれ》馴染《なじ》みの人〻申し合ひして、「棒に弓よ」と所持したる所に、権八は鎗《やり》引つ提《さ》げ来たり、やがて門の外を巡りしに、壁より内に大いなる坊主の如き者立ち廻りけるを見し故、「心得たり、いで突き留めばや」と鎗取り直し、突いて掛ゝりたるに、其の鎗をバ彼の坊主「やらん」と引つ手繰《たく》り取りければ、権八は興を醒まし、内に帰りて其の様子を語りけるに、彼の槍は早《は》や先程に門の方より内に入り、有り逢ふ一人の鬢先《びんさき》に押し当たり、又裏の方に飛び出しける由《よし》。 集まりし皆/\は慄《おのゝ》き恐れて静まり居たりしが、早や暇《いとま》申して帰りけるとぞ。 【現代語訳】

    七日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/23
    妖怪らしい妖怪(?)が登場しだしましたね~。果敢に戦おうとする権八さんは素晴らしい。この後何も起こらなかったのですかね~。気になってしまいました。
  • 六日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (木部屋の戸口を塞ぐ老婆の顔) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 六日の夜ハ、庭の前に有りし木部屋《きべや》に行かんとせしに、部屋に当たり大いさ戸口を塞《ふさ》ぎし程の老婆の顔有り。 平太郎ハやがて思ひ付き、小柄《こづか》提ゲて其處《そこ》に到り、婆《ばゞ》の眉間《みけん》に打ち込みしが、稀有《けう》成るかな、婆は痛める色も無く、平太郎興を醒《さ》まし、其の侭《まま》に捨て置き、帰りける。 明ケの朝に到りて、是を見れば、婆の顔は無くて、小柄は彼の眉間と見て突き立てしと思ひける所に、斯《か》ゝる如く[空《そら》]に成りて有りしとぞ。※脱字を補いました。 「珎《めづ》らしき事かな」と善《よ》く/\見て後ハ、小柄は地上に落ちにける。 是らは一入《ひとしお》

    六日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/22
    この絵は不気味な感じが漂っていますね~。平太郎は度胸があるのでしょうね。私にはできません。
  • 五日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (大指のような足とカニのような目を持った石) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 明くる五日の夜ハ、権八も来たり、咄《はな》しつ「中/\刃物術《はものわざ》には及ばざりし化け物、誠に怪敷次㐧《あやしきしだい》」など申しける處に、やがて米三斗ばかりなる石壱つ走り来たりける。 是を見るに、大指の如き足有りて這《は》ひ、蟹《かに》の如く成る眼《め》有りて睨《にら》み、権八が方に向かひて走り来たる。 権八ハ慌《あは》たゞ敷《しく》刀取りて切らんとせしが、平太郎が押し留めし故、すべき様《やう》無くて帰りける。 扨《さて》、夜明けて後、臺所に有りしを見れバ、近所に有りける車留めの石成りしが、「嘸《さぞ》な、化け物ゝ取り来てかくは仕立てたる成るべし」と申しける。 【

    五日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/21
    化け物との遭遇の中で書かれている人間模様も面白いですね。石は切れない、という冷静な計算だったのか、それとも他に何か思いがあったのか。どうなのですかね~。
  • 四日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (舞い散る鼻紙) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 四日の夜は、水瓶《みずがめ》に入れ置きし水凍り、又ハ茶釜《ちゃがま》の蓋《ふた》開き難《がた》く、火吹竹《ひふきだけ》吹きても風通わざりける。 斯様《かよう》の怪しき事、品/\有りしが、後は違ひ棚に置きし鼻帋《はながミ》、次㐧/\に一枚ヅヽ散り上がりて、蝶の飛ぶ様《やう》に見えしとぞ。 是《これ》などハ明くる日も散りて有りしまゝにて、その跡のまざ/\と残りて有りハ夢とも覚えず、確かなる事どもなりける。 【現代語訳】 七月四日の夜は、水瓶《みずがめ》に入れておいた水が凍り、茶釜《ちゃがま》の蓋が開かず、火吹竹《ひふきだけ》を吹いても息が通りませんでした。 このような怪奇現象が色々ありましたが、最後は違

    四日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/20
    鼻紙が舞っている絵の裏には何があるのでしょうか。こういうお話は想像力を掻き立ててより怖いような気がします。
  • 三日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (ネズミの巣穴から現れた女の生首) (天井からぶら下るひょうたん) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 明くる三日の夜ハ、居間なる隅《すミ》にて、鼠《ねづミ》の巣の有りしに、その小さき穴より、女の生首逆様になりて、髪を突き立てゝ歩み行きたり。 扨《さて》、平太郎が膝《ひざ》に上がり、頭《かしら》に登りて首を廻りつゝ、所〻を舐《ねぶ》りしとなり。 其の心地、言はん方も無かりしが、程無く消え失せけるとぞ。 同じ夜半の頃ハ、天井に青/\として、円《まど》かなる物見えしが、瓢箪《へうたん》の蔓《つる》を引きて、頓《やが》て平太郎が臥したる上に下がりけるとなり。 【現代語訳】 翌、七月三日の夜は、居間の隅にネズミの巣があったのですが、その小さな穴から、女の生首が

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    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/19
    生首の女性とひょうたんの関連が気になります。これには深い意味があると思うのですが、そこが分かりません。知りたいです!
  • 二日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

    (行灯の灯が長く燃え上がる) (部屋の中が水で満たされる) 新日古典籍総合データベース ※この記事では、国文学研究資料館所蔵品の画像データを適時加工して利用しています。 (CC BY-SA 4.0) ※画像は拡大できます。 【原文】 然《さ》れバ二日の夜も行灯《あんどふ》明かしけるに、火長く燃え上がり、後は天井に燃え付くと見えにける。 権八は予《かね》て約せしに任せ、宵より来たりしが、この躰《てい》を見るより、殊《こと》に氣を焦《あせ》りけれども、平太郎が騒がざれバ、後止む事無く帰りける。 其《そ》れより平太郎も捨て置きて臥しけるに、彼の焼けしと見えし天井を見るに、何の跡も無かりけるとぞ。 其の夜、平太郎臥しけるに後、居間の内、何とやらん生臭く覚えしが、俄《にわ》かに水 湧《わ》き出て、鼻へも入るかと思はれ、頓《やが》て起きて見れば、一間の内に湛《たゝ》へてける。 後ハこれも潮《うしほ》

    二日目『稲生平太郎妖怪記』(『稲生物怪録』) - うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~
    aka_koushi
    aka_koushi 2021/10/18
    とても地味とは言えないレベルだと思いますが、これから凄い妖怪が次々と現れてくるのでしょうか。続きが気になります!