今年の1月29日に亡くなった作家・橋本治には様々な顔があった。 1977年に『桃尻娘』で小説現代新人賞佳作を受賞して小説家となった橋本は、それ以前はイラストレーターとして活躍しており「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」というコピーで有名な1968年の東京大学駒場祭のポスターを手掛けた存在としても知られていた。 小説だけでなく、少女マンガ評論『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』を筆頭とするカルチャー評論や、『桃尻後訳 枕草子』以降の『源氏物語』や『古事記』といった古典の現代語訳などを執筆、他にも人生相談からセーターの編み方まで、その仕事量はあまりにも膨大で多岐にわたるため、すべての作品を把握している人は、ほとんどいないのではないかと思う。 しつこく丁寧にものごとを噛み砕いて語ろうとする饒舌な文章は、わかりやすいと言えばわかりやすいのだが、くどいと言えばあま