統合失調症という精神疾患の症状の一つに「誰かが自分の頭に直接語りかけてくる」というのがある。 この病気は文字通り自分という人格の統合ができなくなる。このため脳内で生起する自分の思考が、「他人の声」として認識されてしまう。ちょっと目には不気味にも思えるが、健常な人でも極度に疲れた時に幻聴が聞こえたりする。同じ脳の同じ機序によるものだ。 この状態を人によっては「誰かが自分の脳に電波を送ってくる」と形容したりする。かつて「電波」が狂気の象徴であったのは、このように形容する統合失調症患者がそれなりに多かったということだろう。 ところで、この「誰かが電波を送ってくる」という妄想は、ラジオの発明以前は存在しなかったそうだ。考えてみれば当たり前の話で、「電波で声を送ってくる機械」の発明がなければ、「脳に電波を送信して直接声を送り込む」という類推が出てくるはずもない。ではそれ以前はというと「天使の声」と言