近年、「競争」という言葉は、悲惨で、過酷で、しんどいといったイメージのもとで語られがちだ。 しかし、競争をそうしたものとしてのみ捉えるのは、「競争」というものがもつポテンシャルを切り捨ててしまうところがあるのではないか——。 このほど『今を生きる思想 ジョン・ロールズ』を上梓した学習院大学教授の玉手慎太郎さんが、政治哲学から見た「競争」について語る。 「競争はしんどい」、しかし… ——この20〜30年ほど、日本の「競争社会」の負の側面が注目を集め、「競争は格差を拡大するのでよくない」「競争はしんどい」といったイメージが広がっています。ただ一方で、「いっそのこと競争はなくしたほうがいい」と言い切れるかというと、それもまた疑問に思う人が多いでしょう。 玉手さんの専門である政治哲学や倫理学の知見からは「競争」はどのようにとらえられるのでしょうか。 玉手 政治哲学や倫理学のすべてを代表するわけには