以下は大宅壮一「日本人民共和国の可能性」(『大宅壮一の本8』サンケイ新聞出版局、1967年)からの抜粋である。文章の末尾に「二十五年十一月」とあるので、1950年11月に書かれたもののようである。「草の根の強固な天皇制イデオロギー」などといった主張よりも説得力のある、興味深い指摘だと思うが、大宅が指摘している特徴は、管見の範囲では在日朝鮮人にも当てはまる(ただし本国の韓国の人間には当てはまるとは言えない)ので、「日本民族の性格的な特異性」というよりも日本文化の特徴と読み替えた方が良いであろう。 <明治革命がかくも微弱な抵抗と摩擦をもって完成したということは、天皇制に原因があるのではなくして、日本の民族的な性格に根ざしているとしか思えない。天皇制という錦の御旗が大きな役割を果したことは明らかであるが、そういうものにかくも大きな役割を果させるところに、日本民族の性格的な特異性が存するのである。