「先生に悪気がないことはわかっていますし、たぶんご自分では気づいていらっしゃらないのだと思うのですが、」 と、その学生は私のある講義終わりのレスポンスカードに書いていた。 「先生はとても簡単に“バカ”という言葉を使います。はっきり言って不愉快です。」 彼の言うとおり、指摘されるまで自覚はなかった。そして、悪気もなかった。 「実態は○○なのに△△なんていう政策を進めようとしている時点で、まったくバカじゃないかと思いますね」「バカみたいな話です」「バカか、と言いたくなるでしょう?」といった風に、それまでの私は、何かへの、あるいは誰かへの軽侮の念を込めた批判 非難の意志を表すとき、「バカ」という言葉をとても安易に、それゆえ頻繁に用いていた。 彼は続ける。 「僕は小学校時代、特殊学級に入れられたことがあり、同級生たちに“バカだ、バカだ”と言われ続けて、さんざんバカにされました。“バカ”という言葉は