今までも何度か書いてきたが、僕の母は盲人である。 * * * 全盲ではなく弱視である。白い杖と手帳を持っている。 戦争中に鼓膜が破れて、片耳も聞こえていない。 顔にくっつけるようにして本を読み、飲まれるかのようにテレビの前に座って、24時間テレビを見ては、おいおい泣いている。自分が障害者であることを忘れているようである。「めくらの子供なんて世間様にみっともない」と、幼少の頃は押入れに隠されて育ち、小説のモデルに口説かれるほど波瀾万丈の生涯を送ってきたが、今では埼玉の奥地で平穏無事に、毎日寝っ転がっている。 実の息子から見ても、まったく頑張ってはいない。 * * * 母のおかげで僕も少し点字が読める。 どうしても眼で見てしまうが、そこに何が書いてあるのかはわかる。読むよりも書くほうがずっと楽だ。裏返しの紙を点字器と点筆でへこませていく。裏返しだから当然左右が逆になる。つまり盲人たちは文字を扱