むかしむかしあるところに、あんかけの苦手なおひめさま(自称)がおりました。 おひめさまが子供の頃、読んだ本にはこんな囃し言葉が書かれていました。 「勝ったら官軍、負けたらあんかけ!」 どうやらその子ども達にはあんかけはすこぶる不評なようで、「負けたらあのぶよぶよした食いもん食べなきゃいけないんだぜ」という意味のようでした。 「どうして、そんなにあんかけは悪者なのかしら」とおひめさまは思いました。おひめさまはあんかけを食べることは大好きでしたから。 ただ、自分で作ることはできなかったのです。 待てど暮らせど王子様が来なかったので、おひめさまは毎日ささやかなご飯を作って食べていました。しかし、その食卓にあんかけがのぼることはほとんどありませんでした。麻婆豆腐の素についてくる味付き片栗粉さえ敬遠してしまう程でした。 ごくごくたまに、どうしても中華丼が食べたくなったときにだけ、おひめさまはありった