街中で人間を襲い続けるクマにハンターは……。「文藝春秋」3月号より、ライターの伊藤秀倫氏による「羆を撃つ 札幌4人襲撃事件」を全文公開します。(全3回の3回目/#1、#2から続く) ◆ ◆ ◆ なぜ街の真ん中に現れたのか それにしても、なぜこのクマは、人間も車も行き交う街の真ん中に現れたのだろうか。道総研の釣賀研究主幹はこう推測する。 「分散期の若いオスは新たな環境へ行動範囲を広げるとともに、5月から7月にかけてはクマの繁殖期にあたるので、交尾相手のメスを求めて、広範囲を移動する時期ではあります。とはいえ、あんなところに出るのはレアケースです」 その後の調査で、このクマは札幌から北東に20キロほど離れた当別町方面の山間部から出て、石狩川を渡り、事件前から茨戸川緑地近辺で目撃されていた個体と同一個体と推測された。交尾期のオスは、1日に10キロ移動することも稀ではない。 茨戸川緑地から現場まで