「最近、小粒になってきたなあ」 天保12(1841)年創業の蔵元「聖酒造」(群馬県渋川市)。7代目当主、今井健介さんの目は、わずかな変化も見逃さない。視線の先には、酒造りの命ともいえる山田錦の米粒があった。 聖酒造の大吟醸「関東の華」は、今年5月の全国新酒鑑評会で2年連続の金賞に輝いた。10年で8度の戴冠だ。酒米の王様とも称される山田錦に負うところが少なくない。 日本酒用の稲・山田錦の主産地は兵庫県の東南部。その米粒には酒の雑味となるタンパク質や脂質が少ない。コメの表面を磨き、デンプン質以外の成分を削り落として酒造に使う。 粒の大きさが山田錦の特徴の一つだが、その特質が薄らぎかけているというのだ。 山田錦の8割を主産する兵庫県東南部は、室町時代から酒の名所として知られる土地だ。六甲山系の内陸に位置して昼夜の寒暖差が大きいことや、ミネラル類の多い粘土質土壌が、酒米の栽培に適していた。 193