この連載は、現代社会を少しでも楽しく生きていくために役に立つ文化人類学のもつ独特の「視点」や「考えかた」をわかりやすく示し、皆さんに身につけてもらうことを目的としています。そのために、現代のさまざまな問題に触れた、一般向けの本(新書や文庫になっているものに限定しました)を人類学的に読み解いていくことによって、人類学的視点とはどういうものかを示していこうというやり方を採ってみようと思います。 取り上げる本はいずれも人類学者が書いたものではありません。目的が、文化人類学の専門的知識を習得するというよりも、文化人類学的な視点を身につけることにあるからです。人類学的視点を解説するなどという目的をもたない本を人類学的に「読む」ことによって、つまり「読みかた」をとおして人類学的視点を浮き上がらせるというやり方を採り、現代社会を生き抜くヒントにしてもらおうというわけです。 これから6回にわたり、坂口恭平