2008年発表 (東京創元社) 「今は亡き星の光も」 最終的に“いい話”に落ち着くのが予想できることもあって、玲弥の人物像の“反転”は見え見えではありますが、鮮やかな印象を残すのは確かでしょう。“虚弱児施設”と“教護院”の勘違いもうまいところです。 “蘇り”の真相はたわいもないといえばたわいもないものですし、(前述の勘違いと同様に)解明には特殊な知識を要するものですが、それが本書の“舞台の特殊性”を読者に印象づけている感はあります。 「滅びの指輪」 ここで入れ替わりトリックが出てくるのはさすがに予想外ですが、現代の(ある程度)現実的な舞台でこれが(曲がりなりにも)成立する状況が作り出されているところに脱帽。と同時に、幼くしてそのようなトリックを弄するまでに追い込まれた二人の少女の境遇を考えると、何ともいえない思いが込み上げてきます。そして、“美寿々”に対する“優姫”の不安を裏付けるかのよう