韓国史において極めて重大な事件を扱っていながら、内容的には実質『ローグ・ワン』……。何を言っているのかわからないかもしれないが、それが『タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』である。 適当な運転手とドイツ人ジャーナリスト、タクシーに乗って大混乱の光州へ! 『タクシー運転手』が扱っているのが、1980年に韓国の光州で発生した光州事件だ。当時韓国では朴正煕大統領が暗殺され、それまでの軍事独裁政権からの脱却ムードが漂っていた。しかし1979年12月に全斗煥陸軍少将がクーデターで政権を掌握。さらに1980年5月17日には野党の政治家である金泳三、金大中らを逮捕し、全国に戒厳令を布告した。民主化すると思っていたら大物軍人が出てきて全く逆のことを始めたわけで、民主化を求める学生らを中心に不満が溜まっていく。 戒厳令布告の翌日である5月18日、韓国南部の全羅南道にある光州市で、大学を封鎖した陸軍空挺部隊