長所と短所は表裏一体だ。一見、明らかに欠点にしか見えないことが、視点を変えれば逆に有利になる。 メガヒット商品の誕生秘話として有名な部類に入るが、ポスト・イットがまさにこれを体現していた。付くけれど簡単にはがれてしまう素材という、接着剤としては用をなさないものが、貼ってはがせる付箋用として大活躍の場を得た。いまや、グループウェアとして企画会議からパーソナルウェアとしてToDo管理まで、世界中の編集の現場で、欠かせないツールとなっている。 ポスト・イットは、1969年、アメリカ3M社のある一人の研究者の好奇心による、理論通りではない薬品の調合から誕生した。その“失敗”研究報告は、しばらく眠りにつく。そして1974年、別の研究者の実生活での閃き―「讃美歌集でページを覚えるための簡単に外れない糊付しおり」―を得て、1980年に製品化された。途中さまざまな試練がありながらも、簡単に引き下がらずあ