1971年に創刊された日本初のゲイ専門商業雑誌『薔薇族』。同誌は70年代~90年代にかけて、日本のゲイコミュニティにとって欠かせない「バイブル」だったが、その初代編集長の伊藤文学氏(88)が、実はノンケ(異性愛者)であったことはあまり知られていない。米寿を迎えてもなお意気軒昂な伊藤氏に、当時の編集秘話を語ってもらった。 *** いきなり薔薇族にたどり着いた訳じゃないから、順番に話さなくちゃね。僕の父親の伊藤祷一(とういち)は明治38年生まれで、根っからの文学青年だったんだけど、若いうちに父親を亡くして早稲田大学を中退して出版社に就職したの。戦後に第二書房という出版社を作って、下北沢の自宅が社屋になったわけ。そういうことで僕も駒沢大学を出てそのまま第二書房で働くことになったんだけど、金は父親ががっちり握ってて、給料ももらえないんだよ。 転機は僕が30歳くらいの時だったかな。第二書房の著者の1