死後3000年以上が経過した今も、このファラオには大国の首脳を動かす力がある。自国へのツタンカーメン来訪をエジプト大統領サダトに依頼したのは、米国大統領のニクソンだった。この直訴の結果1976年から1979年にわたって全米を回ったツタンカーメン展覧会は、100万という途方もない人数を美術館に向かわせる。来場者にはそれまで一度も美術館に行ったことのない人も多く、この展覧会はアメリカ各地の美術館の運営方針を一変させるほどの影響を与えたという。 熱狂したのはアメリカ人だけではない。ツタンカーメンは、世界中の考古学者はもちろん、宗教学者、メディア、エジプトや考古学に興味のない者まで惹きつけた。そのためツタンカーメンについては、これまでも多くの書籍やドキュメンタリー映像が作成され、その度に“驚くべき新事実”が世間を騒がせてきた。「ツタンカーメンの両親は近親相姦だった」、「彼は権力争いの末に殺害された