ハンチング帽を被ったおじさんが「吉田類」ですと名乗っても液晶画面越しに「誰だよ」と突っ込まなくなったのはいつからだろうか。「吉田類、下戸」の週刊誌報道に好きだったアイドルが結婚した時以上の衝撃を受けたのは私だけだろうか。 もはや新橋界隈で働くサラリーマンではゲック(月曜午後九時)といえばBS-TBSともいわれている人気テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」でおなじみ吉田類がついに中公新書に登場である。 中公新書が変わったのか、吉田類が変わったのか。よくわからないが不思議な組み合わせに手に取っただけで胸が高鳴ってしまう。ページを捲れば4部構成。章題もそれぞれ順に「酒徒の遊行」、「猫の駆け込み酒場」、「酒飲み詩人の系譜」、「酒精の青き炎」。そして、本書の一番最初のエッセイ(章題と同じ「酒徒の遊行」)の書き出しからして、「酒場放浪記」のノリを予感させる。 「ほらっ、酔っぱらいのおじちゃんだよ」中国系を