江戸幕府最後の将軍。討幕の動きに対抗するが、それが不可能だと判断した時点で大政奉還に突如打って出る。鳥羽伏見戦争後、江戸に逃げ帰り謹慎生活に入ることで歴史の表舞台から消え、明治・大正時代は趣味の世界に没頭して過ごした。その複雑な性格と行動から評価の一定しなかった77年間の生涯を、新たな研究動向のうえに立って描き出す。 はじめに/幕末期のキー・パーソン誕生(家系・血統/一橋家を相続)/京都政局への登場(次期将軍の有力候補となる/安政の大獄と三年半の謹慎生活/一橋家再相続と将軍後見職就任)/禁裏御守衛総督に就任(初めての京都/帰府と将軍後見職の辞表提出/再上洛/禁裏御守衛総督・摂海防禦指揮に就任)/慶応期前段階の慶喜(長州処分をめぐる動き/家茂の辞意表明と条約勅許/第二次長州戦争にいたる過程)/「将軍空位期」時代(第二次長州戦争の勃発と敗北/徳川宗家を相続/出陣中止表明と「変説」/慶応期の幕政