農村部に無尽蔵に近い人手があり、賃金は長期にわたって上がらないと言われていた中国。そんな中、労働経済学の権威である蔡所長は「余剰労働力は枯渇に近づいており、今後は賃金が上昇する」といち早く警告を発した。「ルイスの転換点」(2ページ最後の囲み参照)を迎える中国経済は、どんな変化を見せるのか。 蔡 ファン(以下 蔡) 1980年代から最近に至るまで、中国の農村部にはおよそ1億5000万~2億人の余剰労働力があると言われ続けてきました。ところが2004年、出稼ぎ労働者の多い広東省の珠江デルタ地域で「民工荒」と呼ばれる一般労働力の不足現象が起こりました。 この時、私はある疑問に突き当たりました。経済がこれほど急成長しているのに、余剰労働力はそんなに残っているのだろうかと。例えば、農村部の地元企業だけで1億8000万人を雇用しています。都市部への出稼ぎ労働者は1億3000万人に達しています。さらに、