未来を人質にとる? イーロン・マスクを駆り立てる「長期主義」という特異な倫理観――木澤佐登志『闇の精神史』まえがき全文公開 『闇の自己啓発』『ニック・ランドと新反動主義』などで注目の著者が、ロシア宇宙主義からサイバースペース、そしてイーロン・マスクまで、現代社会の背後にひそむ〈宇宙〉をめぐる思想を抉り出す待望の新刊『闇の精神史』(木澤佐登志、ハヤカワ新書)。果てなき頭上の漆黒に、人は何を見るのか。本書のテーマと問題提起を語る「まえがき」を全文公開します。 『闇の精神史』 木澤佐登志、ハヤカワ新書『闇の精神史』まえがき私たちがあの輝くばかりの砂のお城に対する信仰を決定的に失うことで、私たちの目はよりほの暗い明りに慣れ、その薄い明りの中にもうひとつのユートピアを認めることができるようになるかもしれません。 ――アーシュラ・K・ル・グィン【1】 2023年8月27日、日本人1名を含む宇宙飛行士4