マーティン・スコセッシが描くウォール街。金融資本主義とはギャンブル経済であり、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の世界が『カジノ』や『グッドフェローズ』とどう違うのかと言えば、マフィアの方がまだ人間性と気品、歴史の重みがあっただけマシ、とすら思えて来る。 米国史上最大の金融詐欺事件を映画化 当時にはアメリカ史上最大の金融詐欺事件といわれた実話の映画化だが、その記録はリーマン・ショックでとっくに塗り替えられている。そうした事件の本質は、このジョーダン・ベルフォードの詐欺事件からリーマン・ブラザーズへと、どんどん合法性と違法性の境界が曖昧になって来ている。だがそんなこと百も承知で見ていても、やはりこの映画がショッキングなのは、ウォール街を動かす当事者たちが、合法か違法かなんてまるで気にしていないことに気づかされるからだ。 金融業界を描くのは映画では決して簡単ではない。この映画の時代には仲買人