『レディ・バード』に見るゼロ年代前半の青春像 ─ なぜ主人公はバンドマンに惹かれたのか © 2017 InterActiveCorp Films, LLC. アメリカのポップカルチャーが、過去から断絶された日ははっきりと断言できる。2001年9月11日。ワールドトレードセンターにハイジャックされた2機の航空機が突っ込んだ瞬間だ。それからしばらく、アメリカのポップカルチャーは「喪失」を嘆き、「愛国心」を掲げるようになった。もちろん、それ自体は悪いことではない。社会的な大事件があったとき、作品に反映させるのはクリエイターの使命ではある。しかし、問題は「それ以外の表現」についての不寛容さが蔓延し、表現から多様性が失われてしまったことだ。 映画に限れば、今になってアメリカのゼロ年代の作品群を見返すと、70年代のように反体制的な映画も、80年代のようにテンションのタカが外れたようなテンションの映画も