■破綻した会社から逃げたくなかった 2010年の1月にJALが破綻して、ほどなく新しい体制の下での執行役員・運航本部長を打診されたのですが、そのときは「3日間だけ考えさせてください」とお願いしました。運航本部長になったら、パイロットを辞めなければならない。一生の仕事としてパイロットを選んだわけですし、いま操縦桿を置いたら、ずっと後悔するかもしれない。JALを辞めてでも操縦桿を握り続けるか、悩みに悩みました。 一方、会社も破綻して大変厳しい状況でした。会社を置き去りにして、自分だけパイロットを続けていいのか。厳しいリストラなどが控えているのに、自分だけ逃げていいのか。悩んだ末に、JALを立て直すために働こう、それを人生の新しい目標にしよう、と決めました。それなら、操縦桿を置くことに納得できると。どんなことがあってもこの会社を二度と潰さない、そのために自分はこれからの人生を邁進するんだと固