著者: ロジャー・ペンローズ , 茂木健一郎 2020年のノーベル物理学賞受賞者のひとり、ロジャー・ペンローズ。受賞を記念して、「考える人」2005年夏号〈「心と脳」をおさらいする〉特集に掲載された茂木健一郎氏によるロングインタビューを改めてここに掲載します。 天才物理学者、という言葉がこれほど適切な人物もまずいないだろう。スティーヴン・ホーキング博士との共同研究によるブラックホールの証明。量子重力理論、ツイスター理論。その彼が意識についての大胆な仮説を提案した『皇帝の新しい心』を発表して16年。批判と賞賛の嵐を経たのち、世界的科学者の現在は。 ペンローズとの出会い ロジャー・ペンローズに会うのは、私の人生においては掛け替えのない、特別な出来事である。 ペンローズの『皇帝の新しい心』を初めて読んだのは、まだ自分が将来脳の研究をするなどとは思ってもいなかった、大学院生の頃だった。一九八九年の