ブックマーク / honz.jp (43)

  • 『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』著者、小林照幸にあの頃のこと訊く - HONZ

    死の貝:日住血吸虫症との闘い (新潮文庫 こ 28-2) 作者: 小林 照幸 出版社: 新潮社; 文庫版 発売日: 2024/4/24 小林照幸『死の貝 日住血吸虫症との闘い 』(新潮文庫)が注目されている。4月24日に上梓されて以来、現在4刷、累計2万6千冊のスマッシュヒットだ。26年前の1998年に出版されたが、なぜいまこんなに注目を浴びているのか。以前より小林照幸のを”激推し”してきた東えりかと、医学者・仲野徹が話を聞いた 仲野 『死の貝』は昔読んだ記憶があったけれど、文庫化されたのも20年以上時間が経ってからだし、こんなに注目されることってある?と不思議になりました。どうして突然文庫化されたんですか? 小林 それは新潮社さんからご説明頂きましょうか。 編集部 もともと新潮社の営業部と未来屋書店で、月に一回、情報交換の定例会議をしています。そのなかで女性書店員さんが「そういえ

    『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』著者、小林照幸にあの頃のこと訊く - HONZ
  • 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL 死闘の8カ月』コーポレートガバナンスとは何か - HONZ

    ある事柄について語ろうとする時、いわく言いがたい居心地の悪さを感じることがある。たとえば「民主主義」がそうだ。「民主主義は大切だと思うか」と問われれば、迷わず「大切」と答えるが、そう即答しながらも、どこか口先だけでものを言っているような違和感が拭えない。まるでサイズのあわない借り物の服を着ているような収まりの悪さを感じてしまうのだ。 よく言われるようにそれは、民主主義が血肉化されていないせいかもしれない。私たちの社会は自らの手で民主主義体制を生み出したわけではないからだ。 「コーポレートガバナンス(企業統治)」という言葉もこれと似ている。 東芝、みずほフィナンシャルグループ、日産自動車、関西電力、三菱電機と挙げれば、どれも世間で名の通った一流企業だと思うかもしれない。だがこれらはいずれも近年、経営の歪みが表沙汰になった企業だ。こうした企業の不祥事が問題になるたびにコーポレートガバナンスの重

    『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL 死闘の8カ月』コーポレートガバナンスとは何か - HONZ
  • 「ファイザーワクチン」誕生秘録は、疾走感あふれる奇跡のサクセスストーリーだ!『mRNAワクチンの衝撃: コロナ制圧と医療の未来』 - HONZ

    「ファイザーワクチン」誕生秘録は、疾走感あふれる奇跡のサクセスストーリーだ!『mRNAワクチンの衝撃: コロナ制圧と医療の未来』 バイオベンチャー・ビオンテック社の新型コロナウイルスワクチン開発秘録だ。その疾走感が半端ではない。なにしろ、ワクチン開発に取り組むチームを組織した日からヒトに投与するまでわずか88日しか要さなかった。このことからだけでも、その猛烈なスピードが想像できるだろう。 え?ワクチンといえばファイザーとモデルナのmRNAワクチン、それにアストラゼネカとかで、ビオンテックなんて聞いたことない、という人が大多数かもしれない。ごもっともである。しかし、ファイザーのワクチンは、ファイザー社ではなく、ドイツのビオンテック社が開発したものなのだ。そののワクチンについては、ファイザーが資金提供をおこない、50/50の権利を有するという契約がなされている。だから、来なら、ファイザー・ビ

    「ファイザーワクチン」誕生秘録は、疾走感あふれる奇跡のサクセスストーリーだ!『mRNAワクチンの衝撃: コロナ制圧と医療の未来』 - HONZ
  • やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日本中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? - HONZ

    やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? アバウトにしてアナーキー。ざっくりまとめるとこうなるのだろうか。なんだかやたらと凶暴でハードボイルドな室町時代。日人は律儀で柔和などという言い方は絶対に通用しない。室町時代の後半は戦国時代だったから、というわけではない。武士たちだけでなく、農民や女性、僧侶までもがなんだか殺気立っているのだ。まずは『びわ湖無差別殺傷事件』から。 びわ湖がくびれていちばん細くなっているところ、琵琶湖大橋のかかっている西側に堅田という町があった。というか、今もある。そこに兵庫という名の青年がいた。“他の堅田の住人と同じく、周辺を通行する船から通行量をとったり、手広く水運業を行ったり、場合によっては海賊行為を働いたり“ と、とんでもない多角経営を営んでいた。湖なので、海賊ではなくて湖賊だが、まぁ、それはよ

    やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日本中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? - HONZ
  • オランダ史上最悪の犯罪者と呼ばれた兄を告発した妹による、壮絶なる体験記──『裏切り者』 - HONZ

    書『裏切り者』は、映画にもなった「ハイネケンCEO誘拐事件」の実行犯として知られ、その後も犯罪を重ね「オランダ史上最悪の犯罪者」と恐れられるまでになった男ウィレム・ホーレーダーについて書かれた犯罪ノンフィクション/体験記である。 現在ウィレムは逮捕され、終身刑をらっているのだが、彼の罪を告発し終身刑にまで追い込んだのは実の妹で、書の著者であるアストリッド・ホーレーダーなのだ。書は著者が幼少期を過ごした1970年代から、ホーレーダー家がどのような家庭環境だったのか。また、著名な犯罪者の実の妹として日々を過ごすとはどういうことなのか。兄を告発すると決めた決定的な理由、そして告発を決めた後の戦いが、まるでスパイ物の小説のように展開していくことになる。 実の妹なんだから信頼されているだろうし、告発してもバレようがなくない? と思っていたのだがこれが思った以上に壮絶な関係性で、妹だから許され

    オランダ史上最悪の犯罪者と呼ばれた兄を告発した妹による、壮絶なる体験記──『裏切り者』 - HONZ
  • バックパッカーのリアルな生態を描き出す、小説家による旅行記──『四分の一世界旅行記』 - HONZ

    この『四分の一世界旅行記』はSF・奇想短篇集の『半分世界』でデビューし小説家として活躍している石川宗生によるバックパッカーとしての旅行記である。四分の一世界旅行記と題されているように、訪問する場所は中央アジア、コーカサス、東欧の15カ国。世界一周でもなければ、アマゾンの奥地にひそむ巨大ナマズを見つけるみたいなビッグ・テーマや企画がある旅ではない。旅が好きな作家が行った、気ままで地味な旅行記だが、それがなんだかおもしろい。 いまのご時世、インターネットに情報は溢れかえっており、旅先でそうそう絶体絶命のピンチに陥ったりすることもない。言葉が通じなくても、スマホで翻訳すればやりとりできる。ある意味、現代は魅力的な旅行記を書きづらい時代である。書でも当にたいしたことは起こらないのだけれども、その分、旅の細かなディティール──何をべたとか、どんな人と出会ったとか、ちょっとした困りごと、悩みごと

    バックパッカーのリアルな生態を描き出す、小説家による旅行記──『四分の一世界旅行記』 - HONZ
  • 『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ

    私が住む東京都町田市の小田急町田駅の東口の広場には「絹の道」という石碑がある。それをゼミ生に見せてからJR横浜線の下り線に乗り、八王子に向かう。その車中で、なぜ八王子と町田を結ぶこの街道が絹の道と呼ばれるか、学生たちに説明する。 このあたりの多摩丘陵の地形地質が桑畑に向いていて、それが地域の養蚕業を盛んにしたこと。そうして絹製品の産業基盤がこのあたりにあったところに、幕末期に盛んになった生糸輸出で、山梨や長野、群馬の生糸がいったん八王子に集まり、そこから輸出港横浜まで運搬されるルートができたこと。その流通加工拠点であった八王子には富が蓄積されたし、横浜までは生糸を馬の背に乗せて運ぶにも一日では歩ききれないので、行商人たちがその中間地点の町田で一泊してお金を落としたこと。横浜で生糸を売り捌いて懐が暖まった行商人たちが、おそらく帰路についた一泊目の町田で羽根を伸ばしたので町田には町の規模の割り

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  • 「知の巨人」立花隆のすべてがここに『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』 - HONZ

    立花隆といえば、誰がなんと言おうと言おうまいと『宇宙からの帰還』である。立花隆の最高傑作というだけでなく、日のノンフィクションとして、他を全く寄せ付けない、世界に通用する空前絶後の作品だと断言できる。 1983年に出版されたその以来、立花隆のを何冊読んできたかわからない。それに、露出の多い人なので、ある程度のことは知っていると思っていた。しかし、このを読んでみてわかった。ほとんど知らなかったということが。 単なる好奇心に満ちた「知の巨人」ではない。権力を恐れる必要はない、という教えをキリスト教徒であった母親から学んだ、こわいもの知らずの武闘派である。まずは、幼少期を北京で過ごした後、ただひたすら歩いた記憶しかない引き上げ体験が語られる。 あの体験の影響がすごく大きいと思うのは、その後の人生で、どんな大きな状況変化に出会っても、平気なんですよ。 小学校時代はIQテストでとんでもなく高

    「知の巨人」立花隆のすべてがここに『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』 - HONZ
  • 『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知 』 - HONZ

    2015年10月、池袋・某書店の人文書フロアで、私は立ち尽くしていた。棚に面出しで置かれた『あなたは、なぜ、つながれないのか』を前に、動けなくなっていたのだ。正直レジに持っていくには、少し勇気の要るだった。実際、その日カゴに入れていたは詩集ばかりで、書は当時の自分が手に取る系統のではなかった。 それでも、刊行当初から否応なく気にかかる一冊だった。タイトルが目に飛び込んでくる度、反射的に目をそらしたくなる自分がいた。『あなたは、なぜ、つながれないのか』。他者と打ち解けることができない自分の弱さを責められているような不安、弱さを突きつけられることへの恐れ、それでも「他者とつながりたい」という気持ちがせめぎ合い、整理できない感覚に陥った。 「人に壁を作ってるよね」と冗談交じりに指摘され、内心図星だった学生時代。「そんなコミュニケーションの仕方じゃダメだ」と非難され、反省する一方で、「当た

    『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知 』 - HONZ
  • 天才プログラマーにして闇社会の帝王、超大金持ちにしてドケチ。その男の名はル・ルー。ドラマ化決定の『魔王: 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』は超弩級のノンフィクションだ! - HONZ

    天才プログラマーにして闇社会の帝王、超大金持ちにしてドケチ。その男の名はル・ルー。ドラマ化決定の『魔王: 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』は超弩級のノンフィクションだ! 海賊が跋扈するため、ソマリア沖ではマグロ漁ができなくなっていた。そこで漁をすれば一網打尽、一攫千金だ。しかし、そのためにはロジスティクスも安全も確保しなければならない。巨額の資金による、飛行場付き、傭兵が警護する完全武装の漁業基地建設が始まった。 全米で多くの医師や薬剤師がオンライン薬局での処方薬販売にかかわっていた。違法ぎりぎりの取引に気づいた麻薬捜査官による捜査が始まった。巧妙に操作されたインターネットサイトの裏側で、たったひとつの会社、RX社が巨額の取引を仕切っていた。 腐乱死体を乗せた難破ヨットがトンガの環礁で見つかった。当局が捜査したところ、その船室の壁には末端価格は9000万ドル以上にもなるコカインの塊

    天才プログラマーにして闇社会の帝王、超大金持ちにしてドケチ。その男の名はル・ルー。ドラマ化決定の『魔王: 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』は超弩級のノンフィクションだ! - HONZ
  • 『人喰い ロックフェラー失踪事件』精神世界と現代社会、両者間の深刻な断絶 - HONZ

    「虚実皮膜」とは、芸術は虚構と事実との、皮と膜とのようなほんのわずかな間にあるという意味で、近松門左衛門が語ったとされる言葉だ。しかし、実際にそうかは時と場合によるだろう。書で扱われる「ロックフェラー失踪事件」について知れば、「虚実の皮膜」にあるのは悲劇でしかないということを痛感する。 事件は1961年のオランダ領ニューギニアで起きた。ロックフェラー家の一員として輝かしい未来を約束されていた、マイケル・ロックフェラーという米国の白人青年が、現地のアスマット族によって殺されたのだ。単なる殺人ではなく、首狩りに遭い、その後べられてしまった。 当時、さまざまな事情から真相は闇に葬られ、事件の原因はその後「失踪」や「溺死」とされた。書はその事件の一部始終を徹底的に調べ上げ、なぜマイケルが殺されなければならなかったのかという核心に迫った衝撃のノンフィクションである。 アスマット族の世界は、西洋

    『人喰い ロックフェラー失踪事件』精神世界と現代社会、両者間の深刻な断絶 - HONZ
  • 『団地と移民』団地をみればこの国の未来がわかる - HONZ

    戦後日における画期的な発明といえば? 人によって答えはさまざまだろうが、個人的には「51C」を挙げたい。 「51C」とは、1951年度に計画された公営住宅標準設計C型の通称である。焼け野原からの復興の過程で、不足していた住宅供給をどうするかが国の喫緊の課題だった。そんな中、35平米というコンパクトな空間で、べる場所と寝る場所を分ける「寝分離」を実現させた「51C」の理念は、その後設立された日住宅公団にも引き継がれ、公共住宅の原型となっていく。間取りを考える際に私たちが当たり前のように思い浮かべる「nLDK」は、ここから発展したものだ。「51C」は、現代日人の住まい方のルーツでもある。 かつては狭い部屋で家族全員が寝をともにするのが普通だったから、「51C」の理念に基づいて設計された公共住宅は、当時の人々には輝いて見えたに違いない。事実、1960年には完成してまもないひばりヶ丘団

    『団地と移民』団地をみればこの国の未来がわかる - HONZ
  • 『人喰い ロックフェラー失踪事件』マイケルはなぜ喰われたのか? - HONZ

    最初に言っておく。このは「閲覧注意」である。タイトルそのまま、当にそのままなのだ。 1961年11月20日、マイケル・ロックフェラーはニューギニア南部で消息を絶った。 この地を訪れていた23歳の若者の父親は、ニューヨーク知事で後に副大統領となるのネルソン・ロックフェラー。地球で一番の金持ちで、スタンダード・オイルの創設者ジョン・D・ロックフェラーの孫だ。父親がマンハッタンの五番街そばに開館した「プリミティブ・アート博物館」に展示するコレクションの収集のため、未開の地の美術品を買い付けに来ていたさなかのことだった。 マイケルに同行していたオランダ人人類学者のルネと目的地へボートで移動中、エンジンが故障し漂流した。案内人の現地人が泳いで助けを求めに行った後、しびれを切らしたマイケルは白いブリーフ姿になり、空のガソリン缶を浮き輪替わりに、かすかに見える陸地へ泳ぎだした。水泳には自信があったし

    『人喰い ロックフェラー失踪事件』マイケルはなぜ喰われたのか? - HONZ
  • 『ソッカの美術解剖学ノート』全クリエイターにおすすめ - HONZ

    韓国では著名なイラストレーターである著者が、31歳から40歳まで9年をかけて完成させたのが書『ソッカの美術解剖学ノート』である。 骨や筋肉や内臓など、人体構造について「なぜ今の形になったのか」に言及されているのがポイントであり、その知識をふまえイラストで絵の描き方を伝えている。書では人体の仕組みを知れるのと同時に、各部位がどう動きその形状になったのかが楽しく理解できる。 この楽しさというのが重要であり、「イラストの図解が付いた、とんでもなく面白い人体」と言ったほうがイメージとして伝わりやすいかもしれない。 一般的には、人体やイラストといえば「このように描きましょう」と、一方的に描き方を説明するものだ。一方で書は、目を描く際は「西洋人のまぶたは薄く、瞳孔がよく見える構造となっています。対照的に東洋人はまぶたが厚く、瞳孔がよく見えないため何を考えているのか難しくなり、神秘的なイメー

    『ソッカの美術解剖学ノート』全クリエイターにおすすめ - HONZ
  • 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ファクトで満たせば、世界に希望が溢れ出す - HONZ

    作者:ハンス・ロスリング 翻訳:上杉 周作、関 美和 出版社:日経BP社 発売日:2019-01-11 世界はどんどんよくなっている。ウソだと思うかもしれないが当だ。実際に世界の人口のうち、極度の貧困状態にある人の割合は、過去20年で半分になった。そして、自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年で半分以下にもなった。 この数字自体かなり驚くべきものであるが、さらに驚くべきなのは、この事実を3択問題として出題した時の正答率が、いずれも10%を下回ったことである。これを、単なる知識不足と片付けてよいのだろうか? 書は、世界に対する認識と実態との間におけるさまざまなギャップを提示し、先入観にとらわれず世界を見ることの大切さを訴える。さらにその原因を脳の機能に求め、人が世界を実際よりもドラマチックに見てしまうことを明らかにしていく。 著者は医師であり、そして公衆衛生の専門家でもあるハンス・

    『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ファクトで満たせば、世界に希望が溢れ出す - HONZ
  • 『フォッサマグナ』 足下に広がるミステリー - HONZ

    部活動で調子が良いときは、勉強の調子も良かった記憶がある。無理やり敷延すると、読んでいるが面白ければ、現実世界もバラ色ということになる。その時のは、現実を忘れられるものがよい。没入感の高い小説も良いが、天文や考古学など気宇壮大なも良い。今回は、そんな読書のご利益を得られる、素敵な一冊をご紹介したい。 そのタイトルは『フォッサマグナ』。日のど真ん中を南北に走る、巨大な地溝帯について書かれただ。著者は鵺(ぬえ)という怪物に例えているが、名前を聞いたことはあっても実態がよくわからないものの代表選手ではないだろうか。私は、を読む前、フォッサマグナとは糸魚川と静岡を結ぶ線(断層)のことだと思っていたが、それすらも大きな誤解だった。 私がイメージした糸静線は、フォッサマグナの西の境界でしかない。東の境界はまだはっきりとわかっておらず、一説では柏崎から千葉に至る線だとも言われているそうだ。こ

    『フォッサマグナ』 足下に広がるミステリー - HONZ
  • 『現代経済学 ゲーム理論・行動経済学・制度論』経済学はどこに向かうべきなのか? - HONZ

    経済学とは何か?―こんなシンプルな質問にさえ、今の経済学は答えるのが難しい状況にある。かつて、個々の経済主体の行動から経済全体の動きを理解するミクロ経済学と、GDPなどの集計量から経済全体の動きを扱うマクロ経済学の二つが主流だった頃には、「経済現象を対象とし、それを解明する学問」で済んだものが、20世紀半ば以降、従来の主たる研究対象だった市場メカニズムだけでなく、企業のような市場以外の経済制度も分析対象とするようになり、急速に多様化・複雑化していった。そして、過去30年の間に、書の副題にあるようなゲーム理論や行動経済学や制度論といった新しい手法が次々と生まれてきた。 こうした中で、書は、経済学とは何かという答えを示す代わりに、現在の経済学の広範で多様な様相を整理することで、そもそもなぜこの問いに対して簡潔に答えるのが難しいのか、経済学はなぜそれほどまでに複雑になったのか、そして経済学

    『現代経済学 ゲーム理論・行動経済学・制度論』経済学はどこに向かうべきなのか? - HONZ
  • 『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む - HONZ

    一般に、は読めば読むほど物知りになれると思われがちだが、実際は逆だ。読めば読むほど、世の中はこんなにも知らないことであふれているのかと思い知らされる。その繰り返しが読書だ。 「ディアトロフ峠事件」をぼくはまったく知らなかった。これは冷戦下のソヴィエトで起きた未解決事件である。 1959年1月23日、ウラル工科大学の学生とOBら9名のグループが、ウラル山脈北部の山に登るため、エカテリンブルク(ソ連時代はスヴェルドロフスク)を出発した。 男性7名、女性2名からなるグループは、全員が長距離スキーや登山の経験者で、トレッキング第二級の資格を持っていた。彼らは当時のソ連でトレッカーの最高資格となる第三級を獲得するために、困難なルートを選んでいた。資格認定の条件は過酷なものだったが、第三級を得られれば「スポーツ・マスター」として人を指導することができる。彼らはこの資格がどうしても欲しかったのだ。 事

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  • 『世界を変えた14の密約』 - HONZ

    「企業の密約が世界を変えた」と言えば、ありがちな陰謀説だと思われるかもしれない。しかし、書はそんな陰謀説を掲げてスキャンダルを暴露しようとするではない。むしろ、それとは正反対だ。このは、今わたしたちをとりまくこの世界が、偶然の産物ではなく、ある意図のもとになるべくして今の形になったことを、歴史的な事実と綿密な取材に基づいてひも解いていく。書を読めば、ばらばらに見えた点と点がつながり、今目の前にある世界が違う角度で見えてくる。 著者のジャックス・ペレッティは、名門ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業して調査報道の道に進み、ガーディアンやワイアードといった一流紙誌に予言的な記事を掲載してきた、今最も旬なジャーナリストのひとりである。ドキュメンタリー制作者としての実力も折り紙つきで、書をもとにしたドキュメンタリー番組もBBCで放送され、大きな反響を呼んでいる。 そんな旬の著者が

    『世界を変えた14の密約』 - HONZ
  • 『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』働き方改革、その前に - HONZ

    久しぶりに画期的な組織論のに出会った。 この『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』は、単なるビジネス書ではなく、インターネットなどテクノロジーの進歩により可能になった個人の自律を前提とした会社のあり方、即ち、自己組織化する組織「ティール(Teal)」を提唱する、進化論と発達心理学を基礎とした社会変革の啓蒙書である。 書の原著”Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness”は、2014年に自費出版されて以来、現在まで12か国語に翻訳され、売上は既に20万部以上に達しているベストセラーである。 ピーター・センゲの『学習する組織』が日に紹介された時以来のインパクトと「解説」に書かれているが、

    『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』働き方改革、その前に - HONZ