映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、出演映画『万引き家族』『モリのいる場所』が公開中の女優・樹木希林が、老婆を演じること、是枝裕和監督との出会いについて語った言葉をお届けする。 * * * 是枝裕和監督の映画『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルム・ドールを受賞した。本作で樹木希林は「家族」の一員である老婆を演じた。一見すると人が良さげでありながら、心の奥底の見えない芝居で本領発揮している。 「人間というのはさ、いろんなものを含んで人間だから。通り一遍の『これです』という姿はないわけなのよね。だから、曖昧な中でいろんなものを見せていく。今回は特に、そういうことをできる環境が整っていましたからね。 人間が吹きだまりのように寄ってきて、『いいよ、いいよ、そこ使っていいよ。で、いくらくれるの?』とか言っているうちにああいう結末