悪の問題にむかう――神学と文学における考察に関する試論 本多峰子 Encountering the Problem of Evil—an essay on theodicy and literature concerning evil Mineko Honda <序> 世界にはなぜ悪があるのか?――これは、古来人間が問いつづけてきた大きな問いの一つである。なぜ人間は苦しむのか? なぜ、世の中には悪人がいて、時には善人よりも悪人の方が富み、栄え、幸福そうに見えるのか? これは、哲学ばかりではなく、文学においても大きなテーマでありつづけた。しかし、人が<悪>と呼ぶものは、さまざまである。そして、それに対する答えも。 本論では、現代世界で悪と呼ばれている概念を多少整理した後に、なぜ、この世には悪があるのか、ということについてのさまざまな見方を、主にキリスト教神学の立場から概観し、護教論の可能性を