本研究の目的は、かつてNHKで放送された「農事番組」とりわけ『明るい農村』の「村の記録」の閲覧分析を踏まえ、当時、東京(中央)で農事番組制作を担当していた「農事部」のディレクター、地方ローカル(周縁)で農事番組制作を担当していた「RFD(Radio Farm Director)」ならびにNHK側に情報を提供していた「RFD通信員」(後に「農林水産通信員」と改称)への聞き取りを通じて制作者側は農業・農村にどのような焦点を当てようとしたのか、逆に農村(通信員)側はメディア(テレビやラジオ)という外部からの視線による対象化を意識しつつ、自らの生活や地域社会をどのように提示しようとしたのかを明らかにすることである。 NHKの農事番組が始まったのは、1948年からラジオ第一放送で放送された『早起き鳥』が最初である。この番組は、農業技術、農政問題、農村の話題等を伝える農家や農村向けの番組であり、GHQ