ISBN: 9784622079194 発売⽇: 2015/09/19 サイズ: 20cm/219,3p 日本の精神医学この五〇年 [著]松本雅彦 本書は日本の精神医学の50年を個人的な臨床経験をもとにふりかえるものである。著者が精神医学に向かったのは、文学にかぶれていたからだといっている。しかし、これは例外的なケースではない。精神病は、私のように文学を志した者にとっても輝かしく映っていた。とりわけ、「精神分裂病」が創造的で深遠なもののように見えた。たとえば、埴谷雄高の『死霊』をはじめ、精神科病院を舞台にした小説が多く書かれたのである。 しかし、現実には、医者が創造的な狂気に出会うことは稀(まれ)である。精神科医は、医師の数が絶対的に不足する劣悪な診療の現場の中にいたし、また、「医局講座制」の支配下にあった。この問題は、1960年代の終わりに起こった大学紛争の核心となった。「反精神医学」の