私にはこの映画を楽しむ「技術」がない。 どこで聞いたか忘れた、伝聞の話であるが、かつて故・淀川長治先生はどうしても楽しめなかった作品について、こう言ったと聞いたことがある。真偽にほどはしらないが、淀川先生らしいと思ったし、この「楽しむ技術」という言葉は、長く俺の心の中にある。 こういう感想を書き続けていて苦労するのは、作り手と送り手の自分を如何にして擦り合わせていくかということだ。俺はそう言う部分にはもの凄く神経を使っている。 言ってみれば、作り手はどのように「この映画を楽しんで欲しがっているか」という部分を如何にして受け取り、こちら側が対応していくか。その技術である。 俺は映画館に熱心に通い始めたのが20代前半の頃からで、それ以前はどっちかというと漫画やゲームの方に傾倒していた人間である。だから俺は、映画好きと言われる人に比べて圧倒的に「映画体験」が不足していることを自覚していて、それが