昨年9月に発覚した独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)による排ガス検査の不正は、自動車業界にとって「パンドラの箱」だったのかもしれない。4月に明らかになった三菱自動車の燃費不正問題や、欧州で相次ぐ排ガスがらみのリコール(回収・無償修理)を見るにつけ、そう感じている。当局と業界の「なれ合い」のような現行検査を改め、路上走行検査を徹底して実施しない限り、信頼回復は難しいのではないか。 VWの不正は、ディーゼルエンジンに搭載した違法なソフトウエアを使って、検査の時だけ排ガス浄化装置をフル稼働させて窒素酸化物(NOx)の排出量を基準値以下に抑え、規制をくぐり抜ける手法だ。浄化装置を作動させると燃費や加速力が低下するため、実際に路上を走行する時は装置を停止させていた。その結果、基準値の最大40倍のNOxが大気中にまき散らされていた。