≪エジプトに根付いた日本米≫ 海外に住む日本人、特に日本食材が手に入りにくい発展途上国に暮らす身には、粒が細長くてパサパサしたインディカ米(長粒種)ではなく、ずんぐりとしていて炊くと粘りの出るジャポニカ米(短粒種)をどう手に入れるのかが、食生活の最初の課題となる。 たいていは、短粒種であるカリフォルニアやオーストラリアからの輸入米を扱っている店を見つけ出して一息つくわけだが、およそ10年前、エジプトに1回目の赴任をしたとき、どの店でも日本とほとんど変わらないコメが安く手に入るので、一気にエジプトへの親近感が強まったものだった。 そして、この国で作られているコメがほぼ全面的にジャポニカ米であることを知り、「なぜ?」との驚きも禁じ得なかった。 エジプト農業・土地開拓省の元第1次官で、今も政府の研究所で稲の品種改良に取り組むバダウィー・タンタウィー博士によると、エジプトで稲作が始まったのは約70