九鬼周造の「偶然性の問題」を読みながらある考えがずっと頭の中で醗酵していたが、末尾にいたってそれが確信に変った。つまるところ、偶然なんていうものはこの世にはないのだ。すべては必然であり、偶然とは過去へ遡って見たところの必然にほかならない。 九鬼は当然のように偶然を必然の対義語として捉え、それを出発点にしているが、そういう彼もついには「必然の一種としての偶然」に想到せざるをえなかった。私は一歩踏み込んで、必然といい偶然といっても要するに観点の問題であり、そこから見れば偶然も必然も同じであるような精神の一点が存在すると言おう。 宝くじに当るのも必然なら、暴漢に襲われて殺されるのも必然なのである。さらに大きくいえば、宇宙に地球が誕生したのも必然であり、われわれがいまこの星に生きているのも必然なのだ。 すべては因果関係の網の目の中に整然と配置され、そこから逸脱できるものなど存在しない。因果関係の網
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