特捜検事だった弁護士が言っていた。「いろんな公文書を読んだが、あんなのは見たことない」。森友学園への国有地売却に関する決裁文書、付記すると書き換えられる前のものである。首相夫人や政治家の名前もあり、交渉経過が極めて詳細に記述されている。公文書として異例に詳しいのはなぜか。 ▶そこに問題の本質があるように思える。改竄(かいざん)をめぐる佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官の証人喚問が焦点だが、元の文書が書かれた理由こそ解明してほしい。小欄の見立てはこうだ。森友学園の籠池泰典前理事長はやっかいな交渉相手だった。首相夫人らとの関係をほのめかし、値引きを迫る ▶言うがままになってしまったが、問題になった場合に備えての釈明、つまり保身のためではなかったか。野党は政治家の働きかけや忖度(そんたく)しか頭になく、別の視点で見ようとはしない。バーナード・ショーの名言がある。「人間は何か信じた瞬間、それを否定す