イギリス国王ヘンリー8世の旗艦「メアリー・ローズ号」が1545年、英ポーツマス港沖のソレント海峡に沈んだ。チャールズ皇太子を総裁とする財団が引き上げを計画し、沈没から437年目に浮上した。その姿を一目見ようと2015年7月、ロンドンから列車を乗り継ぎ、メアリー・ローズ号を収容する博物館のあるポーツマス・ハーバー駅に降り立った。 †皇太子自ら潜水 「いよいよお目当てのメアリー・ローズ号にあえる。彼女はいま、どんな姿で私を迎えてくれるのだろう」 船に沿った薄明かりの見学通路から、ガラス窓越しに見たのは、紛れもなくメアリー・ローズ号そのものだった。ポリエチレン・グリコール(PEG)という特殊な溶剤で黒々と輝く船体からは、彼女の息づかいが伝わってくるように思え、熱いものがこみあげてくる。「ワーオ!! 途方もなく大きい」。それが第一印象だった。 メアリー・ローズ号は全長45メートル。91門の強力な火