ベルギーで起きた同時爆破テロから1カ月を経た現在も、新聞各紙では事件の背景を巡る記事が掲載されている。いずれも実行犯を一方的に断罪することなく、彼らをテロ犯に追い込んだ社会構造を理解しようとしている。 4月5日毎日新聞朝刊コラム「火論」は「怪物を生むもの」と題し、「『怪物』は責められるが、では『怪物』を生む者は」という問いかけを発している。記事はヒトラーを扱った独映画を論評したものだが、「どこか身につまされるような」と暗示するように、現代を生きる私たちの身近な世界にも、同様の問題があるのではないかと反省をやんわり促す文章になっている。 ただし、いささか弱いように感じる点は、そうした「怪物」を生み出したのが資本主義的な近代化の過程そのものなのではないかという自省的な問いである。戦後日本の繁栄もまた、資本主義が格差を作り出すシステムである以上、第三世界の貧困を犠牲とすることで手に入れたものでは