2015年02月27日00:51 カテゴリ本 正統なき異端 安倍首相が「戦争をしたがっている」とか「ヒトラーだ」という類の話は、彼を過大評価している。よくも悪くも、彼にはヒトラーのような信念も指導力もない。憲法改正は、今では政治的スローガンとしてもほとんど意味がない。 丸山眞男は1950年代なかばから死ぬ直前まで、『正統と異端』という幻の主著を書こうとしたが、ついに未完に終わった。それは彼の弟子との研究会をまとめたもので、その資料や録音テープが今後も刊行される予定だ。本書ではその研究会に40年間つきあった著者が、なぜこのプロジェクトが未完に終わったかを語っている。 当初はキリスト教の正統と異端という図式で天皇制と共産党を論じるという発想だったらしいが、戦後に天皇制や共産党の正統性が衰える中で、丸山はL正統(legitimacy)とO正統(orthodoxy)の違いに興味をもつようになる。西