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6.思うところ(2) 他の感想として,遺族の方々と話していて,特に以下の2点について衝撃を受けたので書いておきます.ひとつは,「政府の委員をやっているのであれば,行政も科学者も我々にとっては同じだ」とはっきり言われたことです.こう言われてあらためて考えてみれば,一般の方々には確かにそのように映るのかもしれません.でもこれは我々研究者には衝撃的な情報です.国から依頼を受けて委員を引き受け,可能な限りの知見を提供します.それがどう料理されて国民に届くのかまで,必ずしも我々研究者が関知できるわけではありません.誰がどこまでなんの責任を負うのかは明確にしておく必要があります. たとえば原子力発電所の建設に科学的見地から反対したとしましょう.でもたとえば,原子力安全・保安院や事業者がそれに応じなかった場合,そして事故が起きてしまった場合,誰が責任を問われるべきでしょうか.これは今現在,実際に起きてい
6.思うところ(1) 最後に私の感想をばらばらと書いておきます. 検察側が提示した国家市民保護局長官と州政府市民保護局長の電話音声を聞けば,行政側に「安全宣言を出す」という明確な意図があったのは明らかです.その点において,本来であれば国民の命を守る立場である省庁の責任者がそれをまったく取り合わなかったのですから,なんらかの刑事責任が問われても仕方がないと思います. でも科学者については,刑事責任は重すぎると感じています.確かに,結果的には行政担当者の身勝手な思惑を科学の力でねじ伏せることができませんでしたし,むしろ利用されてしまった点は,犠牲者の命の重さを考えれば,軽率だったとも言えます.しかし,現在進行形で起きている事象に対して,しかも今の人類の英知ではなんの結論も出せないような状況においては,可能な限りの知見を提供し,「わからない」ということを表明するのが科学者としてもっとも誠実な態度
3.訴追された理由は『予知の失敗』ではない さて,日本の多くのメディアが間違えた見出しで報告している,訴追の理由についてここで書いておきたいと思います.『予知失敗で禁錮6年』などという表現のまま,新聞やテレビで報道されていますが,予知の失敗ははじめから告発理由に入っていません.告訴された理由は,『地震が起きる前に,安全宣言を出したから』です. 2011年1月に,ラクイラ地震の遺族会のメンバーに会いに行きました.この時点で地震から2年近くが経過していましたが,愛する家族を失った悲しみはその時もそのままに感じられました.遺族らは2つの点において非常に憤っていました.ひとつは,地震が起こる可能性があったのに政府と委員会が『安全宣言』を発表したこと,2つめは,予知してくれなかったから裁判で訴えたと世界じゅうの人々に思われていることについてでした. 特に2点目については,「我々は予知ができないことく
4.なぜ『安全宣言』になったのか これについては検察側が重大な証拠を提出してきました.国家市民保護局の長官であるベルトラーゾ氏と州政府市民保護局長であるスターティ氏との電話やり取りです.証拠音声では,安全宣言を出すという結論ありきで大災害委員会を開催すること,巷で予知情報を出している”お騒がせ野郎”を黙らせて市民の不安を落ち着かせよう,といったやり取りがなされています.このテープについては2012年4月にINGVで関係者にインタビューしたときに教えていただき,その後,NHK-BSで放送された『訴えられた科学者たち ~イタリア 地震予知の波紋~』であらためて拝聴しました. つまり,行政はパニック状態の市民をおさめるために,はなから安全情報を出すつもりだったこと,そしてそれは行政判断ではなく,科学者からのお墨付きという形で遂行することを,委員会を開催する前から決めていたのです. 委員会の開催に
2009年4月6日に起きたラクイラ地震の被害の拡大を巡って,2012年10月22日にイタリアの地震学者らに禁錮6年の有罪判決が言い渡されました.行政とその諮問委員会メンバーの科学者らが過失致死傷罪に問われていた裁判の判決です.これについて,現地に調査に行ったり,委員会メンバーや行政担当者,そして遺族から話を伺ったりしていましたので,私が分かっている範囲の事や,私の考えをまとめておきます. 長いので以下の7ページに分けました. 関連組織について ラクイラの地震活動とラクイラ地震 訴追された理由は『予知の失敗』ではない なぜ『安全宣言』になったのか 科学者はどうするべきだったのか 思うところ(1) 思うところ(2) 裁判に関する用語など間違えがあるかもしれません.気づいたら修正したり加筆したりします.他にも,修正すべき個所や加筆すべき情報がでてきましたら,随時編集します.重大な編集については,
10月22日に発表された,イタリアでの地震学者の訴追事件について,現地での関係者へのインタビュー調査などの結果をmumbleにまとめました.全部で7ページになっています. 関連組織について ラクイラの地震活動とラクイラ地震 訴追された理由は『予知の失敗』ではない なぜ『安全宣言』になったのか 科学者はどうするべきだったのか 思うところ(1) 思うところ(2)
地球と対話するだけではなく,人や社会とも対話する地震学者でありたい.そして,そんな新しい枠組みの地震学を創りあげていきたい. 2011年3月11日の大きな犠牲に向き合い,私にできることは何なのかを繰り返し問いかけ,今後に生かせることはすべて生かすことを誓って,発信してまいります.
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