サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
TGS2024
courrier.jp
予想に反したバブル到来 2022年、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始すると、ロシア第2の都市サンクトペテルブルク在住のアントンは、自身が経営するレストランが最悪の事態に見舞われるのではないかと危惧した。外国人旅行客は姿を消し、西側諸国の制裁によるロシア経済崩壊を見越して金利は急上昇。地元住民も外食どころではなくなった、とアントンは話す。 しかし、これは取り越し苦労だった。ここ2年で状況は完全に回復し、お金に余裕ができたロシア人は消費に意欲的だ。 対ウクライナ戦争が長期化するにつれ、戦時下にある防衛産業が好況で給与が上昇すると、民間企業も同様に給与を上げないと、深刻な人材不足のさなかに労働者を呼び込めなくなった。こうしてロシアは思いがけず、個人消費ブームを迎えた。 「実質賃金は急上昇しています」と話すのは、ドイツ国際安全保障研究所(SWP)のロシア経済専門家ヤニス・クルーゲだ。「ウクライ
欧米ではEVの販売が低迷する一方、ハイブリッド車の売れ行きが好調だ。各メーカーともEVに専念するのをやめ、ハイブリッド車を作る戦略に切り替えている。しかし、そのブームは一時的なものに過ぎないと、英誌「エコノミスト」が警鐘を鳴らす。 高まるハイブリッド車人気 自動車業界はいま、ガソリン車から、バッテリーで稼働する電気自動車(EV)への転換を通じてCO2の排出をなくそうとしている。しかし、そのどちらも欲しがる消費者が増えつつあり、プラグインハイブリッド車(PHEV)の売り上げが爆発的に伸びている。 PHEVはEVの価格が高すぎる、あるいは充電スタンドの配備が不充分だと考える消費者に人気だ。2023年、バッテリー式電気自動車(BEV)の世界的な売り上げは、PHEVに対して2倍だったが、その差は急激に縮まってきている。投資調査会社バーンスタインによると、2024年上半期、PHEVの売り上げは前年同
日本の次期首相、石破氏は日米同盟の再構築を提唱 日本の次期首相は、日米同盟を不平等だとして再構築を唱えてきた元防衛大臣の石破茂氏(67)に決まった。米国政府との緊張が高まる可能性を秘めている。 石破氏は27日に行われた与党・自由民主党の総裁選で僅差で勝利し、国会は10月1日、石破氏を首相に選出する。 石破氏は過去4回の総裁選に敗れており、今回が最後の挑戦だと語っていた。9人の候補者からなる混戦の中、同氏は政治資金問題発覚後の自民党のイメージを修復することを公約に掲げてトップに躍り出た。決選投票で、日本初の女性首相を目指した高市早苗・経済安全保障担当相(63)を僅差で破った。 拡大を続ける中国の軍事力、北朝鮮のミサイル実験、そしてロシア軍機の領空侵犯など、日本が前例のない安保上の課題に直面している中、石破氏は首相に就任する。
日本のサービス業界における人手不足が叫ばれて久しいが、この状況が続けば日本のウリであった「最高のおもてなし」を旅行者が受けることはなくなるだろう。日本で教鞭をとる英国人大学教授のフィリップ・パトリックが、日本へ行くならいまがラストチャンスと警鐘を鳴らす。 来日ブームという諸刃のサムライの剣が、利益だけでなく痛みをも引き起こし続けているなか、「観光公害」が、ここ日本の最新のトレンドワードとなっている。 過密やマナーの悪さ、地元住民の締め出し……と次々と挙げられる目下の問題点は、目玉の観光地とそれらを囲むホテルやレストランのスタッフ不足だ。日本文化において質の高いサービスがいかに重要かを鑑みれば、これはまさしく危機である。 もっとも、この話にさほど目新しいことは何もない。社会が高齢化し、出生率は低調なままで、丈夫な若年層が縮小していくにつれ、労働力不足は長年の問題だった。ヘルスケア、流通、農業
9月27日に行われた自民党の総裁選で、石破茂元幹事長が高市早苗氏を決選投票で破り、新総裁に選出された。 ワシントン・ポストは速報の記事で、石破氏を「中国と北朝鮮による安全保障上の脅威に対抗するため『アジア版NATO』の創設を希望している」と紹介。そのうえで、元国防大臣は極めて不安定な国際情勢に対処しなければならない、と書いている。 不安定にしている要因の一つとして、同紙はトランプ大統領の再選の可能性を挙げる。安全保障同盟国の価値を疑問視しているトランプが大統領に復帰したとしても、親密な関係を築いていた安倍元首相はもういないと指摘する。 また、石破氏が回顧録のなかで「日本の安全保障が米国に依存している『非対称性』のため、日本はいまだに真の意味で独立国とは言えない」と書いていることを報じている。
2024年7月17日、スイス・チューリッヒ──フロリアン・ウィレット、フィオナ・スチュワート、フィリップ・ニチキは報道関係者の前にいた。3人とも「サルコ」と呼ばれる自殺カプセルの推進者だ。 サルコは、内部に設置されたボタンを押すと、カプセル内の酸素が窒素に入れ替わり、中にいる人が数分で死に至るよう設計されている。それは「もっとも美しい死に方」だと、プレゼンの途中、ウィレットはうっとりしながら語ったとスイス紙「ル・タン」は伝える。
「不倫よりもセックスレスのほうが罪」──もちろん、ステレオタイプかもしれない。だが、「フランス人は性生活を重視する」というイメージは根深い。そしてそのイメージは、フランス人にとっても同じ(だった)ようだ。いま、フランス人がそんな「普通」のカップル像から脱却しようとしているという。 2000年代──レストランのテーブルを囲んで5人のパリジェンヌが性生活を語っている。「週に何度もセックスしてる」、「私たちも。大好きなの!」、「逆立ちでもやったんだから」……。20年後、彼女たちは笑う。「普通じゃないと思われないように、皆多かれ少なかれ嘘をついてたんです」。メンバーの一人、教師であるジャンヌは言う。 当時は「パフォーマンス崇拝」が夜の生活までも支配していた。メディアや専門家たちは、激しい性生活を送るようにと繰り返し促した。ある年の「エル」誌の表紙はこうだった。「あなたはビッチ? こっそりできる衝撃
インテルには根本的な問題がある。AI向け半導体への積極的な投資が続く中で、中核半導体事業の早期回復が見込めないことだ Photo: Jason Henry for The Wall Street Journal 米半導体大手インテルは3年前、時価総額が現在の2倍以上あり、パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は企業買収を模索していた。 それが今では、インテル自身が買収の標的となっている。戦略上の失敗と人工知能(AI)ブームが相まって、米国で最も有名な半導体企業の運命は大きく変わった。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は20日、米同業クアルコムがインテルに買収を打診したと報じたが、これは56年に及ぶインテルの歴史でほとんど見られなかった脆弱(ぜいじゃく)性を映している。 同社が問題を抱えるようになったのは、ゲルシンガー氏が就任する前の製造分野での失敗がきっかけだった。そして経
戦車はウクライナによるロシアへの越境攻撃で活躍しているものの、近年は脆弱(ぜいじゃく)性が高まっており、各国の軍隊軍はこの強力な兵器の仕様や運用方法を見直している。 戦車はかつて戦場の王者だった。だがドローン(無人機)が普及すると、大型で大きな騒音を立てる戦車は数分以内に見つかり、標的にされるようになった。そのため、西側諸国が供与した最先端の戦車数十両は補助的にしか運用されておらず、実戦投入された戦車は破壊されたり敵に奪われたりしている。 これを受け、軍はドローンを探知してその攻撃から防御する技術を戦車に搭載しつつあるほか、重い装甲車の機動性を高めるための設計変更も検討している。戦場の戦術はすでに変わりつつあり、ウクライナでの教訓は訓練に生かされている。 「機甲部隊の生存可能性を維持するには、何らかの調整を早急に行うことが絶対的に必要になる」。米陸軍将来コマンド(AFC)のジェームズ・レイ
フランスでワイン消費量が激減している。 フランスといえば、「19世紀半ばには、1日1本のワインを飲み干す成人も少なくなかった」ほどのワイン消費大国だった。 1950年代には、いくつかの小学校で8歳以上の子供に、昼食と一緒に少量のワインが提供されていたという逸話もある。 現在、フランスでは18歳からワインが飲めるが、Z世代のアルコール摂取量は減少しており、仏紙「ル・モンド」が掲載したある調査によれば、アルコールを飲んだことがないフランスの10代は、2002年にはわずか4.5%だったのに対し、2020年にはその数値が20%に上昇している。 そんなフランスの年間ワイン摂取量は、1970年代以来、2023年までに4600万ヘクトリットルから2400万ヘクトリットルに減少している(1ヘクトリットル=1hl=100リットル)。
新たな段階 ハマスと連帯するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラと、イスラエルの間の小競り合いは2023年10月8日以来続いてきたが、この数日間でその戦いはますます激しさを増している。 9月23日には、イスラエル軍がレバノンにおこなった攻撃で、レバノン当局によると490人以上が死亡した。これは2006年のイスラエル・ヒズボラ戦争以来最悪の被害だという。 これを機に、イスラエルとヒズボラの全面戦争が勃発するのではないかと懸念されている。 米ノートルダム大学の歴史学・平和学教授を務めるアッシャー・カウフマンは、メディア「カンバセーション」への寄稿で、最近のイスラエルの攻撃は、これまで双方が抑制的におこなってきた消耗戦とは異なる新たな段階へと状況を変えたと指摘する。 双方の覚悟は ヒズボラの指導者ハサン・ナスルッラーフは、イスラエルの行動は宣戦布告に等しいと述べる一方、「報復」にのみ言及して
あらゆる人間関係のなかでもっとも激しい対立にいたるのは、異性間の、ときに同性間の、性的なトラブルだろう。出会った瞬間に惹かれ合った恋人であっても、長年連れ添った腐れ縁の夫婦であっても、性生活の不満は別れをもたらすことになる。 だが、それほど重要な問題にもかかわらず、我々はその解決策を持っていない。いや、正確には「話し合う」というすぐに実行可能で単純明快な手段があるのだが、「性的な事柄について話すのは禁忌だ」という思い込みから、この手段を取るには億劫なだけなのかもしれない。 パートナーとの性生活に関する悩みを抱えているけれど、それを解決できずに苦しんでいる人は少なくないはずだ。これに関しては、単純かつ非常に有効な解決法がひとつある。ただし、実行することは難しいアドバイスだ──米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、性に悩む人々に向けたヒントを報じた。 結局、解決策はひとつしかない セックスや親密な
経産省のクールジャパン政策課と戦略デザインファームBIOTOPEが協働で実施したリサーチ「海外都市から見た日本ブランドの今と今後の可能性」が今年5月に発表され、話題となっている。海外在住者の視点から、日本ブランドの価値を体系的に示した画期的なレポートだ。 リサーチを主導した株式会社BIOTOPE代表の佐宗邦威は、「インバウンド増加は円安だけが理由ではなく、日本文化に対する深い理解が後押しとなっている」と語る 日本文化は海外でどのように受け入れられているのか? 日本を好きになる人はどのようなプロセスを経ているのか? そして、日本人は自分たちの国をどう捉え直すべきなのか──佐宗に話を聞いた。 海外での気づきがきっかけに ──日本文化が海外でどのように受容されているのか、大々的な定性調査をした経緯について教えてください。 個人的なことですが、2023年の6月に世界一周旅行に行きました。旅中でニュ
今年は世界各地で音楽祭が中止に なぜ? サイケデリック・ロック・フェス、デザート・デイズ、キックオフ・ジャムなど———。 米国各地で音楽フェスの中止が相次いでいる。 これは米国だけでなく、欧州、オーストラリアなどでも起きており、英国では2024年だけで60以上の音楽祭が中止になった。
酒好きは、アルコール摂取に対するメリットを強引に探し出そうとしがちですが、実際のところ少しでも良いことはあるのでしょうか? もしもないのであれば、なぜ法律で禁止してしまわないのでしょうか? 専門家が答えます。 科学者たちは長いあいだ、お酒などのアルコール飲料が人間の健康に良いのかどうかを解明しようと試みてきましたが、正反対の結論に至るケースもよく見受けられます。 はっきりいえるのは、ワイン、ビール、そのほかのアルコール飲料が人の体に害をおよぼす恐れがある理由はいくつもある、ということです。とくに当てはまるのは、いわゆる「大酒飲み」の人です。 アルコールはブドウ、大麦、ジャガイモといった植物に含まれる糖分を発酵させることで生成される化学物質ですが、アルコールを摂取したときの体への影響は、摂取量によって変化します。さらに、アルコール摂取前に食事をどれくらいとったか、体重はどれくらいかといった要
Text by Adam Chamseddine, Stephen Kalin and Omar Abdel-Baqui 9月17日午後3時25分、イランの支援を受けるイスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバー2人が、レバノンの首都ベイルートのショッピングモールで昼食を取っていた。このうち1人が持っていたポケットベル型の通信機器が爆発し、彼は重傷を負い、腕や目から出血した。 午後3時34分、別の爆発がヒズボラの事務所を破壊した。目撃者の話では、内部連絡に使われていたポケベル型機器が一連の数字から成るテキストメッセージを受信し、その後5秒間音が鳴った後に爆発した。男性1人が椅子から投げ出され、机が壊れたという。 レバノン当局によれば、ベイルートおよびレバノン各地にいるヒズボラ関係者に支給された何百台ものポケベル型機器が相次いで爆発し、12人が死亡、2800人余りが負傷した。救急救命室は爆発の被
中国は、経済の拡大と製造業のグリーン化(グリーン・マニュファクチャリング)への公的支援を産業政策に掲げ、羨望の眼差しを向けられるほどの成功を収めた。中国の台頭を目の当たりにした他国は危機感を募らせ、いっせいに自国産業の育成と保護へ向かった。 40年前にも、台頭しつつあるアジアの経済大国との競争への不安から、自由市場経済圏の大国間で、政府による同様の介入が実施された時期がある。当時の不安の元凶は中国ではなく、日本だった。 作家のマイケル・クライトンが1992年に発表したサスペンス小説『ライジング・サン』は、日本の辣腕経済戦士をダークに描き、ベストセラーリストに君臨した。同じくベストセラーリストを席巻していたのが、日本で強い影響力を持つ通商産業省(当時)が作り上げた、金融とテクノロジーの巨大勢力について警告するノンフィクション作品群だった。
2016年から「X(旧Twitter)」でラテン語の魅力を発信し続け、著書『世界はラテン語でできている』がベストセラーとなった、ラテン語研究家のラテン語さん。ラテン語だけでなくそのほか6ヵ国語を操り、フランス語に至ってはわずか3年間で上級者レベルにまで到達したという、驚きの外国語学習法を教えてもらいました。 私がラテン語の勉強を始めたのは、高校2年生のときでした。子供の頃から東京ディズニーリゾートが大好きで、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタのロビーに飾られていたイタリアの地形を描いた大きな絵が気になっていたんです。そこには、長い説明がラテン語で書かれていました。そこで私はこれを「理解したい」と思ったんです。 また、英語のテストで点数を上げるために、英単語の語源をよく調べてもいました。そうするとラテン語にいきつき、言葉の由来からうかがえる昔の人の物事のとらえ方を知ることが面白くなったので
天才プログラマーとしてビジネス界で活躍し、台湾史上最年少の35歳で入閣後は、迅速かつ効率的なパンデミック対策を講じたことで知られるオードリー・タンが、今年の5月にデジタル担当相を退任した。彼女はいま、新著を引っ提げて世界を巡っている。幸福で包括的な場所という、彼女が理想とするウェブのヴィジョンから、私たちは何を学べるのか。英紙「ガーディアン」がインタビューした。 いつ死ぬかわからなかった子供時代 オードリー・タンの人生のスタートは、決して楽なものではなかった。 ハッカーから台湾の大臣に転身した彼女は、4歳のときに、心臓に開いた穴を塞ぐ大手術を受けなければ、5割の確率で亡くなると宣告された。主治医からは「過度に興奮すれば、いつ命を落としても不思議はない」と告げられたが、手術を受けるまでに8年も待たねばならなかった。 こんな宣告をされたら、自己中心的になり、短い人生を自分のためだけに生きようと
移民は国を変える。ただし、良い方に変えるか、悪い方に変えるかは移民が持つ文化次第だ。 移民は数世代を経ても移住先に完全に染まり切りはしない。人間は文化と共進化してきたため、もともとの文化を完全に捨て去ることはできないのだ。だから、移民問題の本質は「文化の衝突」にあるといえる。 ジョーンズ准教授の研究は、移民がもたらす衝突の後に生まれる新しい文化の質は「良い文化・豊かな文化を持つ移民を受け入れたのか、悪い文化・貧しい文化を持つ移民を受け入れたのか」に影響されると示唆する。 米ジョージ・メイソン大学の経済学者のギャレット・ジョーンズは著書『移民は世界をどう変えてきたか──文化移植の経済学』で、移民と受け入れ国のもともとの住民の間で文化的な相互作用があると論じた。 ときにはいい方向に、ときには悪い方向に向かうその変化をどうとらえ、移民政策を考えればいいのか。仏誌「レクスプレス」が聞いた。 移民は
スタンフォード大学の名誉教授ロバート・サットンは、学界でも特別な存在だ。彼は精力的に研究を続けてきたが、その講演の聴衆は学者たちではない。企業幹部や管理職の人々、そしてあらゆる企業の社員たちが、サットンの声に耳を傾けてきた。 組織心理学者としての40年以上の経験を通して、サットンは、組織内で起こりがちな問題と解決策を追求してきた。その成果は、ベストセラー『スタンフォードの教授が教える職場のアホと戦わない技術』をはじめとする著書にまとめられている。 サットンの最新作は、スタンフォード大学で長年研究をともにしてきたハギー・ラオとの共著『フリクション・プロジェクト 職場のおかしなルール改革』(未邦訳)だ。本書でサットンたちは、あらゆる企業の管理職者に向け、業務を困難に(ときには不可能に)している職場での「摩擦」について真剣に考えるよう呼びかけている。また、仕事の効率アップから大幅な働き方改革まで
ジークムント・フロイトが唱えた性をめぐる基本定理は、その死後85年を経ても、現代の数多くの議論に影響を与え続けている。 フロイトの著作は画期的であったし、あり続けている。いまわれわれがLGBTQコミュニティと呼ぶ人々に着目した点では、なおさらそうだ。 だが、学問的な注目を受けるのは、たいていがその男性の同性愛の概念であり、女性の同性愛をめぐる彼の考えが議論されることはめったにない。 その理由のひとつは、フロイトの画期的な方法論の中核である症例研究と関わっている。 フロイトはその症例研究で、患者の来歴を分析・解釈して、心理学的な一般原則を説明した。たいがいの学術研究は、有名な5つの症例研究を主眼とする。フロイトはそれぞれにコードネームを付けていた。ドラ、ハンス少年、鼠男、シュレーバー博士、狼男だ。 このリストから抜けているのが、1920年になされた6つ目の症例研究であり、フロイトが最後に完了
男性は生きづらいし、女性も生きづらい。もちろんLGBTQだって生きづらいだろう。 しかし大事なのはその後だ。みんなが「自分たちだけが生きづらい」と思ってしまっている。いまや性自認グループは政治信条から異なる集団と化しつつあり、互いを罵り合う分断も激化した。特定の性別がこの世からいなくなればと、憎悪を募らせる人もいる。 こうした分断をもたらしているのが、「限りある地位財」という思い込みだ。欠乏を感じると、人は攻撃的になる。 キングス・カレッジ・ロンドンの上級講師である社会科学者のアリス・エヴァンスは、世界各国を巡りながらジェンダーに関する研究を続けている。世界で男女の政治的分断が深まっているのはなぜなのか? 国や地域によって経済に格差があるように、ジェンダー平等の進退に違いがあるのはなぜ? 英誌「ニュー・ステイツマン」が取材した。 男性のほうが「生きづらさ」を感じている? 男女間の政治的分断
米国ではいま、若いアスリートたちが漫画やアニメへの愛を積極的に発信するようになっており、それがスポーツ界ばかりか、いわゆる「オタク」のイメージにも大きな影響を与えている。自身も『ドラゴンボールZ』と『遊戯王』のファンとして育ったという米紙「ニューヨーク・タイムズ」の記者が、この状況を報じている。 ジャマール・ウィリアムズ(29)は2023年、NFLのニューオーリンズ・セインツに加入後初の会見に、キツネのようなキャラクター、イーブイの帽子を被って登場した。彼はアメフトについては語らずポケモンについて話し、この会話が彼の自己紹介代わりとなった。 米国の陸上選手ノア・ライルズは、今夏のオリンピックの男子100メートルで金メダルを獲得した際、『ドラゴンボール』の「かめはめ波」をするように、お椀形にした両手を前に突き出して喜びを表現した。 Noah Lyles is the brightest st
地熱発電に絶好の条件がそろっていながら普及が進まない日本で、いち早くその取り組みを始めたのが福島県・土湯温泉だ。米紙「ワシントン・ポスト」が同地を訪ね、震災後に客足が途絶えた温泉地を再生エネルギー開発によって復興しようとする住民の思いを取材した。 福島県福島市の近郊にある土湯温泉は、1400年前に開湯して以来、多くの旅人たちを魅了してきた。 長大な火山帯・吾妻連峰の山懐に抱かれた土湯温泉町の住民は、数百年にわたり、この地を訪れる旅行客をもてなし、土産物などを売って生活している。 だが9年前、国内の他の温泉地が二の足を踏む事業に同町はあえて乗り出した。貴重な温泉を再生可能エネルギー源に転用する、地熱発電所の建設だ。 土湯温泉は日本の温泉文化を守りながら、豊富なクリーンエネルギー源を活用する事業の先駆者となっている。 地熱発電を懸念する温泉産業 日本は世界第3位の地熱資源に恵まれた国だが、電力
参拝者が絶えない 東京の喧騒のなかに佇む「気象神社」は、一風変わった新たな聖地として人気を集めている。日本で唯一の天気を祈願する神社として知られるこの場所には、夏のうだるような暑さや、破壊的な超大型台風からの救いを求めて訪れる人が急増している。参拝者は手を合わせ、お辞儀をして神に祈る。 「これまで日本には春夏秋冬という四季がありましたが、最近は真夏と真冬の二季しかありません」と、参拝に訪れた50代の男性、ヤマダ・ヨウイチは話す。同じく参拝者のスズキ・ショウタ(35)は、「洪水など気候変動の影響が心配です。夏の暑さは年々厳しくなり、猛暑で農作物が被害を受けています」と言う。 2019年にヒットしたアニメ映画『天気の子』に登場したこともあり、若者世代から人気を集めている気象神社。杉並区の西部に位置し、巨大な鳥居の横には毎日の天気予報が表示されるデジタル掲示板が設置されている。参拝者が絶えないこ
クーリエ・ジャポンでは今日から9月20日までの3日間、「AIの変革を見据えて“未来の戦略”を考える」をテーマに掲げ、オンデマンド配信形式でオンライン・カンファレンスを開催いたします。 この記事では、リンダ・グラットン教授と山口周さんの対談「『人生100年時代』を生きる私たちはどのようなキャリアを築くべきか」から、冒頭部分を記事化して公開いたします。関心のある方は、ぜひ全編を動画でご視聴ください。 リンダ・グラットン そうですね。とても重要な質問です。このことについて話し合えて嬉しく思います。これはCEOたちが最初に聞く質問なのです。AI技術の進化のスピードは驚異的ですからね。 ChatGPTがリリースされたとき、私も、あなたも、何百万人もの人が試しに使ってみました。 これは技術が人間に与える影響の長い歴史の一部です。機械と人は共に働いてきました。はじめ、機械は単純作業を代行してくれました。
アンナ・サワイは「死」の前に、モーツアルトを聴いたという。 それはドラマ『SHOGUN 将軍』の重要なシーンだった。サワイが演じたのは、高貴な出自でありながら謀反人の娘という宿命を背負わされた女性、戸田鞠子だ。戸田はそれが死刑宣告に等しいと知りながら、狡猾な石堂和成(平岳大)に猛然と食ってかかり、壮絶な最期を遂げた。 その大事なシーンに備えて、サワイはモーツアルトのレクイエムのなかの「ラクリモーサ」を聴いたと語る。 「本当に気持ちを高めてくれる曲で、パワーをもらいました」と彼女は言う。そして、そのエピソードの監督を務めたフレデリック・E・O・トーイについてはこう続けた。 「フレッドが何度も私のところに来て、『もう2~3テイク撮れるかい?』と確認したのを覚えています。私の答えは、『もちろん、大丈夫よ。今日は調子がいいし、やりましょう』でした」 封建時代の日本を舞台に、ジェームズ・クラヴェルに
コロナ禍を経て、全米で家賃が高騰。なおインフレに苦しむなか、若者たちは家賃を節約するために付き合いはじめるとすぐに同棲するカップルが増えているという。交際初期の同棲について、米紙がカップルたちに聞いた。 キャロライン・リーとコリン・ワンは、8ヵ月の交際後に同棲を始めた。28歳のワンはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の医学部最終年に在学していたが、当時住んでいた2ベッドルームのアパートにカビが発生していることを知り、すぐに引っ越さなければならなかったものの、新居を見つけるのに苦労していたと米「ニューヨーク・タイムズ」紙は報じる。 「キャンパスに近くて、価格もリーズナブルな物件を探すのは非常に難しかった。しかも、学期の途中だったから」とワンは語る。 一方、24歳の看護師であるリーは、カリフォルニア州サンタモニカ近くにある3ベッドルームのアパート(家賃5000ドル)に住んでいたが、2
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『クーリエ・ジャポン | 海外メディアから記事を厳選!』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く